京都・葵祭の伝統を守り継いできた1人の大ベテランの姿が今年は会場で見られなかった。ヒロイン「斎王代(さいおうだい)」の結髪(けっぱつ)・化粧を60年以上担ってきた結髪師で、御年96歳。「手はなんぼでも動くが、足が……」。祭りへの思いを募らせつつ、後進に託す。 「この仕事が好きで好きで、たまりませんねん。だから、何かだらーんとしてね、さみしくってね」。南登美子(とみこ)さん=京都市下京区=は率直な思いを語る。 花街・祇園近くに「ミナミ美容室」(同市東山区)を構える。味わいのある看板や玄関は歴史を感じさせる。祖母ぢうさんが1888(明治21)年、芸舞妓(げいまいこ)の髪結いをする店として創業。ぢうさんの娘ちゑさんが2代目として後を継いだ。 ちゑさんが日本画家だった兄から引き取って養子として育てた3歳の娘が、後に3代目となる登美子さんだった。 舞妓が遊び相手 1928(昭和3)年生まれ。30年代