田部家・櫻井家・絲原家 たたら製鉄が盛んだった江戸時代、松江藩には「鉄師御三家」と呼ばれる製鉄業の中心的存在があった。藩の財政を支えただけでなく、地域に風雅を伝える文化拠点としても機能した。田部(たなべ)家、櫻井家、絲原(いとはら)家。今も旧宅や町並みに御三家の地域への存在の大きさが色濃く残る。たたら職人をまとめあげた鉄師の矜持を感じて、奥出雲を歩きたい。 鉄の歴史村を標ぼうする雲南市吉田町。その中心にあったのが、田部家だ。1707年からの200年の間に21の蔵を建て、その土蔵群は今も残る。整然と並ぶ白壁の土蔵群は、往時の威光を伝え、吉田のシンボルとして親しまれている。 吉田のまちは田部家を中心に発展した。有力者が暮らす本町通り、鉄の加工場や職人の長屋などが機能的に配置された企業城下町の名残は、現代にあってもまちのそこかしこから感じられる。 奥出雲町上阿井の櫻井家は、大坂夏の陣で倒れた戦国