理想論かもしれないが、本当の「在野研究者」というのは、地方で公務員や教師をしながら、休日に家族も顧みず、郷土史を編んだり、新種の動植物や地層を見つけたりといった人々ではないのか。 しかしここに登場するのは、編者の荒木が京大大学院出身であるように、ほとんど旧帝大や有名私大の大学院出身者であり、また1980年代半ば生まれつまり30代中盤が多い。 この年齢で「安定した職」を得ることが出来ないというのは、世間からみればかなりの落伍者だが、研究の世界ではごく普通のことである。 たいてい、月額3万円の非常勤講師をいくつかと、塾講師や家庭教師などを掛け持ちしながら、実家や奥さんに食わせてもらっているものである。 単に「現在は大学にポストを得ていない」だけで、本当に大学等に職を得ずに「在野」でやっていく覚悟があるように見える著者の方が少ない。 ほとんどは、大学にポストがあれば尻尾を振ってそちらになびくだろ