『消費は何を変えるのか 環境主義と政治主義を越えて』 著者 ダニエル・ミラー(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン人類学教授) 訳者 貞包英之 法政大学出版局 3520円 デジタル文化人類学の権威である著者は、いくつかの事例観察に基づいて、消費者自身が生活する家族や近隣社会との関わりのなかでの消費現象を分析している。カリブ海のトリニダード島でのコーラのローカル対応への進化やロンドンでのジーンズ・ファッションの標準化に関する事例研究、消費宣伝に関する広告業界の内情調査などで、消費を文化と捉える文化人類学的な観察を展開している。 著者は消費の日常的な切実さに注目し、家族の中での消費行動に愛と利他主義が見られる、と指摘する。たとえば、「ピーナッツ・バターは、子どもが食べるべきものですが、同時にあなたの子どもが食べるからこそ、買われるのです」という消費の規範(標準的な状態と実際の状態の隔たりを小さく