ネット上には関東大震災時の朝鮮人虐殺を否定する妄言があふれているが、そのほぼ唯一のネタ本となっているのが、加藤康男著『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』(ワック 2014年)である。※1 この本の虐殺否定論の骨子を整理すると、次のようになる。 朝鮮人が暴動を起こしているというのは流言ではなく事実だった その証拠に、震災直後の新聞に暴動を伝える記事が大量に載っている 後にこれらが流言とされたのは、政府が隠蔽工作を行ったからだ 朝鮮人は確かに殺されたが、これは暴動に対する反撃の結果だから虐殺ではない 関東大震災発生直後、各地の新聞は「不逞鮮人」による暴動を事実であるかのように伝える記事を大量に流したが、これは震災によって交通・通信手段が壊滅し、被災地の実情を確認することもできずに避難民その他が伝える流言をそのまま記事にしてしまった結果に過ぎない。仮に当時の新聞記事の内容が事実だとしたら、朝