東京・杉並の高円寺駅前の商店街に、なぜか若者が集う銭湯がある。昭和8年(1933年)創業の老舗銭湯「小杉湯」だ。多い日には利用者が1000人にも上る。さらに、東急不動産とタッグを組み、2024年春に原宿のど真ん中に開業予定の商業施設「ハラカド」へ、2号店の小杉湯原宿(仮称)を開設する驚きの一手にも打って出る。サウナでも、スーパー銭湯でもない。家に風呂があるのが当たり前の時代に、若者はなぜ小杉湯に吸い寄せられるのか。銭湯を核にしたコミュニティーづくり、街づくりの全貌を前後編にわたって解き明かす。 東京23区の西部、杉並区にある高円寺駅から徒歩約5分。商店街を抜け、少し道をそれた住宅街にその銭湯はある。日本伝統の丸みを帯びた唐破風(からはふ)屋根が威厳を放つ、重厚な宮づくり(神社仏閣風の建築)が特徴の「小杉湯」だ。 平日の夜に訪れてみると、風呂場には数多くの客が集い、気持ちよさそうに入浴してい