この記事は「ああ、シュティルナー様…。」「『唯一者とその所有』マックス・シュティルナー」「マックス・シュティルナー研究日本語文献選集」「シュティルナーは「生き生き」しているか」「シュティルナーとアイロニーについて」「ほんとうにおめでたいのはだれか」「『唯一者とその所有』の訳文について」を素材として加筆・修正を施したものです。 シュティルナーとエゴイズム マックス・シュティルナーは、1844年に『唯一者とその所有』を著して脚光を浴びた哲学者である。哲学史においてはヘーゲル左派における最急進派として言及され、政治思想史的には個人主義的アナーキズムの源流の一つとされることが多い。彼自身は、「エゴイズム」を以て自らの思想的立場を示した。 エゴイズムとは何かについて、私自身の考えとは多少異なるものの、日本におけるシュティルナー研究の第一人者である住吉雅美の解説を引いておく(後掲『リバタリアニズム読本