もし読者の中に、「キツネにだまされたことがある」という方がいたら、ご一報ください。取材に行きます。そう言いたくなるくらい、キツネにだまされた体験を持つ人はまずいないだろう。 しかし、キツネが人に悪さをする、人を化かすという話は日本各地にごまんとある。子ども時代には、そんな話をいくつも読んだり聞かされたりしたものではないだろうか。 たとえば、キツネが人間の不意をついて食べ物をかすめ取る話は多い。それはキツネがその土地の自然や人間の習性を熟知しているからできることであり、いわば野生の知恵のようなものだろうと得心がいく。だが、中にはキツネが旅人や女など人間に姿を変え、いい温泉があると川に入らせたり、おいしいまんじゅうだと馬糞を食べさせたりするという、人がすっかりしてやられた話もあるのだ。 そこまでキツネに「だまされていた」はずの人間だが、1965年以降この手の話は発生しなくなり、と同時に急激に姿