「この5年間で何を感じてきたか、ひと言で言えば無力感なんです。『人ってこんなに話を聞かないものだったんだ』と。とにかく敵と認定したら何を言ってもダメ。聞いてくれない」と語る東浩紀氏 批評家・作家の東浩紀氏は若くして批評界にデビューして以来、30年近くにわたり、哲学書、評論、小説、エッセイ、そして膨大な数の対談と、さまざまな領域で活躍してきた。 新刊『忘却にあらがう 平成から令和へ』はそんな東氏にして初となる時評集で、『AERA』(朝日新聞出版)に連載中の時評5年分、計131本を収録している。 本書で取り上げられる話題はその大半が「ああ、あったなあ」と思い出されるものばかり。誰もが知るそうした話題を扱いながら、多様な視点に加え、「国を愛することと、国を愛するという『記号』をまとって自己満足することはまったく異なる」といった「寸鉄(すんてつ)人(ひと)を刺す」名言も随所で味わえる。 毎回見開き