安倍晋三首相は2014年11月18日、経済成長の下振れ懸念が強まったと判断し、消費増税の1年半延期を問うため、衆議院の解散を正式表明した。 すでに衆院選がスタートしているので、この流れは誰にも止めることはできない。しかし、前回のコラムで説明したように、財政危機を回避するのに残された時間はそれほど長くない。増税を巡る対立の本質は「実施 vs 延期」ではなく、本当の対立軸は「いまの痛みか vs 近い将来のより大きな痛みか」という選択だ。リーマン・ショックや東日本大震災のような異常事態が起ってもいないのに、増税を延期することは賢明な選択ではなかった。 では、政府債務がGDPの2倍を超えているにもかかわらず、なぜ財政は危機的な状態に陥っていないのか。それは、「『量的緩和』の本質は『国債利払いの抑制』」の回で説明したように、日本銀行が異次元緩和を実施し大量の国債を市場から買い入れているからである。そ