世界の総人口が80億人になった。本来の地球生態系で養える2倍の増加だ。それを可能にしたのは第一次世界大戦前夜のドイツで生まれた「ハーバー・ボッシュ法」という空中窒素の活用技術の発明だ。 2個の窒素原子が結びついた窒素分子は大気の8割を占めている。窒素はDNAやタンパク質の構成素材で、動植物にとって重要な元素だが、無生物界(大気)から生物界への補給ルートが極めて細かった。 マメ科植物と暮らす根粒細菌などだけが窒素分子を2つの原子にほぐし、植物が使えるアンモニアの素材にすることで、生物界に供給していたのだ。 マメ科植物が枯れると窒素肥料となり、他の植物が育ち、草食動物が食べ、肉食動物がそれを食べるという窒素循環を利用して人類も生存してきたわけだ。 迫る飢餓の足音産業革命後、世界人口は急増し、1900年頃には約20億人になっていた。 だが欧米諸国は喜ばず、逆に飢餓の予感におびえていた。社会の進歩