生物の大量絶滅期に起きる温暖化と寒冷化は、大規模な火山活動や小惑星衝突で地下にある堆積岩が加熱される温度と時間で決まるという仮説を、東北大学の海保邦夫名誉教授が唱えている。地球では過去に5回、生物が急激な気候変動によって大量絶滅した時期がある。恐竜が絶滅した約6600万年前は小惑星が衝突して、上空に舞い上がったちりなどが日光を遮って寒冷化したとされる。ただ、絶滅につながった気候変動の多くは詳し
北海道内の河川をふるさととするサケの幼魚が2010年以降、海水温の上昇で知床半島沿岸からオホーツク海へと北上できない環境にあることを、サケ研究の世界的権威である帰山(かえりやま)雅秀・北海道大学特任教授(魚類生態学)が突き止めた。 道内のサケ漁が不振に陥っている大きな要因とも考えられるという。 帰山教授によると、道内生まれのサケは、春先に海に出た後、6月まで各地の沿岸で生息し、いったん知床沖に集結する。その後、オホーツク海を北方へ移動し、カムチャツカ半島とサハリンの間の海域に秋までとどまって成長し、11月には北西の北太平洋へ回遊。越冬して、翌年6月にはベーリング海で育つという。 帰山教授は、気象庁のデータベースなどを基に、海水温の上昇が日本系統のサケ幼魚の分布と回遊ルートに与える影響について調査した。その結果、幼魚がオホーツク海を北上することの多い7月頃の最適水温(8~12度)の水域は、0
仏・パリのEDF財団に展示された「コケのテーブル」。光合成による再生可能エネルギーの可能性を示したアート作品(2013年4月25日撮影、資料写真)。(c)AFP/JOEL SAGET 【8月16日 AFP】動物や人間の繁栄を支えるのに十分な量の酸素を地球にもたらしたのは何かという謎は長年にわたり科学者らの頭を悩ませてきたが、この答えを「コケ」に見つけたとする新説が15日、発表された。 米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された研究論文によると、地球に初の安定した酸素の供給源をもたらし、知的生命体の繁栄を可能にしたのは、約4億7000万年前に始まったコケの増殖だったという。 論文の共同執筆者で、英エクセター大学(University of Exeter)のティム・レントン(Tim Lenton)
今から6600万年前に起きた恐竜など生物の大量絶滅は、地球に小惑星が衝突して舞い上がった「すす」による気候変動が原因だったとする新説を、東北大大学院理学研究科と気象庁気象研究所が発表した。 大量絶滅を引き起こした要因として最も有力なのが、メキシコ・ユカタン半島に落下した小惑星原因説。だが、小惑星の衝突と気候変動の因果関係を巡っては、巻き上げられた「ちり」が太陽光を遮って起きた地表寒冷化、大量発生した酸性雨による海水の酸性化など諸説ある。 東北大の海保邦夫教授(有機地球化学)らは、カリブ海のハイチとスペインで小惑星衝突後に堆積した地層からすすを採取し、成分を分析。炭化水素の一種「コロネン」の含有率が高いことを突き止めた。 コロネンは超高温で有機質が焼けた場合に限って含有率が高くなる性質があり、小惑星衝突の熱で生成されたと結論付けた。 コンピューターで当時の気象変動を再現すると、舞い上
6600万年前の恐竜絶滅など過去の地球における大変動は、太陽系が3000万年ごとに銀河円盤面を通過することが関連しているかもしれない。米大学の生物学者が、銀河円盤のダークマターが地球に及ぼす影響について検証した。 【2015年2月20日 Royal Astronomical Society】 私たちがいる太陽系は、天の川銀河の中心部の周りを約2.5億年周期で回っている。その軌道は、星やガスや塵が密集した円盤面に対して上下方向に揺れ動いており、およそ3000万年ごとに円盤を通過する。 米・ニューヨーク大学生物学部のMichael Rampinoさんによれば、この円盤通過の時期が、地球の活動やそこに生きる生物の大量絶滅と関連する可能性があるという。これらの事象にもおよそ3000万年の周期性が指摘されており、円盤通過が地球に及ぼす影響を検証した結果によるものだ。 銀河円盤を太陽系が通過すると、太
大衆魚ホッケの値上がりが止まらない。主漁場である北海道沖での若い魚の取りすぎや海水温の変化で水揚げが激減した上、輸入物も漁獲規制で流通量が減ったことが背景にある。安さと食べ応えが人気だった「居酒屋の定番メニュー」は、どうなるのか。 「のどぐろ開き 1900円」「きんき開き 1900円」「極上縞(しま)ほっけ 1500円」 東京・築地近くの干物居酒屋「越後屋八十吉(やそきち)」のお品書き。ホッケが店で3番目に高価な魚だ。店長の春田憲司さん(30)は「大衆魚だったホッケも今では高級魚」と話す。 店では、輸入物のシマホッケと、国産のほぼ全てを占めるマホッケの2種類の干物を扱う。シマホッケの仕入れ値は3年前と比べ、1・5倍。大型が手に入らず、小ぶりのマホッケでさえ990円で、アジやサンマの590円より高い。 定食店「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングス(東京都)も、シマホッケの開きの単品価格を
北海道南部の黒松内低地帯とされてきたブナ自生地の北限が、さらに12キロ北にあることが、森林総合研究所北海道支所の田中信行地域研究監(森林生態)らの調査でわかった。新たに見つかったのは直径約70センチのブナを中心とした約40本の小さな個体群。田中研究監は「北限のブナが分布拡大の途上にあることがはっきりした」として、温暖化との関係にも注目する。 新たな個体群が見つかったのは、ニセコ山系に連なる日本海に近い雷電山の中腹(蘭越町と岩内町境の標高約625メートル付近)の北斜面。林と呼ぶにはまだ小さな群だが、約1ヘクタールの範囲にブナがばらばらに生え、大きさもまちまちであることなどから、自然に生えたものと判断した。田中研究監は「カケスなどの野鳥が種子を運び、育ったブナが実を結んだ後、その実から育ったブナたちが個体群を形成した」と推測する。 田中研究監は昨年10月、地表を覆うササをかき分けて林の中に分け
【合田禄】東南アジアの熱帯雨林で生物多様性が高いのは、繰り返された氷河期に島々がつながったり離れたりした際、生物が行き来できたからかも知れない。森林総合研究所などの研究チームが木の遺伝子を調べ、成果を発表した。 東南アジアの島々に広く分布するフタバガキ科の木は、ボルネオ島とそれ以外の地域で、遺伝的に大きく二つのグループに分けられる。ただ、マレー半島やスマトラ島に近いボルネオ島の一部では、二つのグループが交じり合っているところもあった。 さらに解析したところ、28万年前〜9万年前ごろに二つのグループに分かれ、その後、氷河期で島が陸続きになったときにマレー半島やスマトラ島のグループが、ボルネオ島に移ってきたことが示唆された。 森林総研の大谷雅人主任研究員は「アジアの熱帯雨林では、島が海で隔てられている間に生物の種が分かれ、氷河期に海が干上がって再会して、新たな種が生まれる。この過程を繰り
静岡地方気象台(静岡市駿河区)がサクラの開花観測に使う標本木が、本来のソメイヨシノではない可能性があることが、独立行政法人「森林総合研究所多摩森林科学園」(東京都)の勝木俊雄主任研究員(45)らの調査で分かった。 知人の樹木医から「静岡地方気象台の標本木が、周囲のサクラに比べて開花が早い」と聞き、形態を調べたところ花の大きさなどに違いがあり、DNAを調べたという。 ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンが交雑した栽培品種で、基本的には接ぎ木や挿し木で増やすため、同じ遺伝子型を持つクローン。全国のサクラの半数以上を占める。 同気象台の標本木と、同科学園などにあるソメイヨシノのDNAを抽出し、32か所の遺伝子を比較した結果、11か所で遺伝子型が異なっていた。勝木研究員は「種としてはソメイヨシノと同じグループに分類できるが、栽培品種としてのソメイヨシノではない」と指摘。ソメイヨシノがさらにオ
風に乗って運ばれる昆虫やクモを気象レーダーで追跡し、夏の豪雨をもたらす積乱雲が生まれる現場を突き止めることに、気象研究所などのグループが成功した。 積乱雲の発生を予測する技術につながる成果。26日から茨城県つくば市で始まった日本気象学会で発表する。 積乱雲は、風が集まった場所で上昇気流ができると発生する。研究グループは昨年8月7日午後、東京西部の上空約500メートルに全長1ミリ程度の昆虫などが滞留しているのを、羽田空港の気象レーダーでとらえた。東京湾からの冷たい海風と陸の暖かい空気がぶつかる場所に、風に流されてきたホソハネコバチやクモが滞留したものとみられ、そこで積乱雲が生まれたのも確認した。昆虫などの体内の水分が、雨滴と同じようにレーダーの電波を反射するらしい。 また、最初にできた積乱雲から、冷気が雨とともに噴き出し、これに乗って昆虫などが移動するのも追跡。冷気が次々と新しい積乱雲を誕生
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