(映画のネタバレが少しあります) リモート読書会の題材となったので、石牟礼道子『苦海浄土』を初めて読んだ。恥ずかしながらそれまで一度も読んだことはなかったのである。 新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2004/07/15 メディア: 文庫 なんの知識もなく読んだが、途中から違和感を抱いた。 これは本当に誰かがしゃべったことなんだろうか? そしてその「聞き書き」なんだろうか? 江津野杢太郞という9歳の水俣病患者の家族を記したところで、その祖父、爺さまが妻とともに漁をすることを語る次のような言葉を読んだ時にそう感じた。 あねさん、魚は天のくれらすもんでござす。天のくれらすもんを、ただで、わが要ると思うしことって、その日を暮らす。 これより上の栄華のどこにゆけばあろうかい。 寒うもなか、まだ灼け焦げるように暑うもなか夏のはじめの朝の、海の上でござすで。水俣の方も島原