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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (7)

  • 遺伝子特許の是非を問い、不可能に挑戦した人々の物語──『ゲノム裁判――ヒト遺伝子は誰のものか』 - 基本読書

    ゲノム裁判――ヒト遺伝子は誰のものか 作者:ジョージ・L・コントレラスみすず書房Amazonこの『ゲノム裁判』は、ヒトの遺伝子に特許が認められるのが当たりまえだった時代のアメリカで「誰かが発明したわけでもない、自然に存在するヒト遺伝子に特許が認められるのは人間の権利の侵害といえるのではないか?」と疑問を抱き、歴史的な裁判を起こし、最高裁で判決が下るまでの流れを記録した一冊である。 遺伝子特許がとられると何が起こるのかと言えば、特定の疾患のリスク要因となっている遺伝子を検査する時に特許使用料をとれるので、ほぼ独占的に検査ができるのである。しかしそれは検査を行いたい個人からすればはなはだ不都合な状態だ。 普遍的な書名に惹かれて買ったので、読み始めてから「アメリカの裁判の話なのか〜」と若干読む気が失せたのだが、読み進めてみたらこれが意外なことにめちゃくちゃおもしろい! 「自然の産物」ついての特許

    遺伝子特許の是非を問い、不可能に挑戦した人々の物語──『ゲノム裁判――ヒト遺伝子は誰のものか』 - 基本読書
  • 索引の歴史は、時間と知識についての物語である──『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』 - 基本読書

    索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明 作者:デニス・ダンカン光文社Amazon主に重要な単語や人名が何ページに出てくるかを示すために巻末についている「索引」。索引はノンフィクションについていることが多いが、これに注意を払う人はあまり多くないだろう。調べ物でもなくただそのノンフィクションを頭から尻尾まで楽しみたい人にはそこまで必要なものとはいえない。実際、僕も読まない方が多い。 しかし何か具体的な目的を持ってあるを読んだり、読み返したりする人にとってはとても重要な存在である。えーとこののフロイトについて言及してる箇所が知りたかったんだけどどこだったっけな……という時に、電子書籍なら検索で一覧が表示されるが紙の場合は索引がなければ最初から読み返す必要があるからだ。 書『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』は、そんな索引の歴史について書かれた一冊である。僕が日頃読むノンフィクションには日

    索引の歴史は、時間と知識についての物語である──『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』 - 基本読書
  • なぜ、アルツハイマー病の研究が遅々として進まなかったのか?──『アルツハイマー病研究、失敗の構造』 - 基本読書

    アルツハイマー病研究、失敗の構造 みすず書房Amazon認知症の一種であるアルツハイマー病は、誰もが老化と共におちいる可能性のある病気だ。記憶力が衰え、言語・思考などあらゆる知的能力がだんだん衰退し最終的には死に至る。体はそのままで人格が壊れていくことから人の恐怖はもちろん、日常生活を単独で行うことが難しくなっていくので、介護負担・費用の問題も大きい。 がん治療が進歩し人々が長く生きるようになると、必然的にアルツハイマー病の患者は多くなる。厚生労働省が2022年6月に公表した患者調査(2020)では継続的に治療を受けているアルツハイマー病の患者数は79万人にものぼる。1996年には2万人であったことを考えると、増えているのは間違いない。それなのに、わずかに進行を遅らせる薬こそ存在するものの、症状を劇的に改善させる薬は作られていない。 最近も、米品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病治療

    なぜ、アルツハイマー病の研究が遅々として進まなかったのか?──『アルツハイマー病研究、失敗の構造』 - 基本読書
  • アルゴリズムを闇雲に信じることがないように、その限界を認識する──『アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』 - 基本読書

    アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか (文春e-book) 作者:ハンナ・フライ文藝春秋Amazonグーグル検索をした時、Facebookをみたとき、ECサイトで「おすすめ」商品が表示される時──我々はいま、日常のあらゆる側面でアルゴリズムと接している。近年アルゴリズムはインターネットの中だけではなく、たとえば自動運転車とか、たとえば犯罪予測、国民の信用スコアの計算など、様々な側面で猛威をふるいだしている。 書『アルゴリズムの時代』(原題『HELLO WORLD: How to Human in the Age of the Machines』)は、そうした状況に対して、アルゴリズムが実際どう使われていて、どの程度信用に足るものなのかを複数分野に渡って紹介していく一冊である。単純にアルゴリズムにはこんなこともできる! とかあんなこともできる! とその利点をずらずらと羅列し

    アルゴリズムを闇雲に信じることがないように、その限界を認識する──『アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』 - 基本読書
  • この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書

    サハリン島 作者:エドゥアルド・ヴェルキン発売日: 2020/12/22メディア: 単行このエドゥアルド・ヴェルキン『サハリン島』は、ロシアのメディアで、この10年で最高のロシアSFと評されているSF長篇である。「この10年で最高」というのは、気軽に使うにはリスキィな褒め言葉だ。何しろ、これでつまらなかったら他のこの期間に発表されたロシアSFはいったいなんなんだ、という話になってしまう。 なので、話半分というか……、勢い余って言い過ぎちゃった人がどっかのメディアにいたのかな? ぐらいの心持ちで読み始めてみたのだけれども、いやはや……。これはたしかに、この10年で最高のロシアSFかどうかはわからないがめちゃくちゃおもしろい! 表面的な題材だけ抜き出してみれば、ゾンビ的な感染症に第三次世界大戦による終末世界化、変容してしまった世界を二人の男女が旅をするという、ありきたりなポストアポカリプス物

    この10年で最高のロシアSFと言われる傑作終末SF──『サハリン島』 - 基本読書
    mfluder
    mfluder 2020/12/30
  • あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書

    宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネット・コワルによる、1950年代の女性の計算者&パイロットの物語を描き出す、宇宙開発系のSFである。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞というアメリカの主要SF関連賞を総なめにした、SFにおける今年最大の話題作のひとつ。僕はそもそも、SFとしては現実的な科学に根ざして宇宙を舞台に展開する物語、宇宙開発系と言われるサブジャンル全般が特に好きだから、作にも大いに期待していたんだけど──いやーこれはおもしろかった! 主な舞台となっているのは先に書いたように1950年代のアメリカだが、この世界は我々の

    あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書
  • SFの醍醐味がつまったSFコミック短篇集──『無限大の日々』 - 基本読書

    無限大の日々 作者: 八木ナガハル出版社/メーカー: 駒草出版発売日: 2018/02/28メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る著者八木ナガハルがコミケやコミティアで発表したオリジナルSF漫画を集めたこの一冊。SF物で一巻完結という時点で珍しいが、その中身は漫画という表現形式ならではの壮大なSFアイディア/光景をみせてくれる、SFとしての醍醐味がたんまり詰まった短編集だ。軌道衛星、何種類もの軌道エレベータ、昆虫型の異生物、機械知性に自由意志問題──といったいくつものネタを、守備範囲が海外SF小説メインのハードSF者と自己紹介する著者が調理していくので、それはまあおもしろいわな。 各作品をざっと紹介する 当は絵、ヴィジョン、見せ方をそのまま貼っつけてお見せしたいところだがそれは無理なので全八篇の収録作を順番に紹介していこう。まず最初に収録されているのは、別々の惑星で同じ

    SFの醍醐味がつまったSFコミック短篇集──『無限大の日々』 - 基本読書
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