帰り道、信号待ち。横に母と娘。母がおそらくは中国語で娘になにかまくしたてている。たくさん喋っている。おれには中国語がわからないが「今夜はハンバーグ」とだけ言っているわけではないだろう。怒っているように聞こえたので、ひょっとしたら「あなたはいつも宿題を後回しにして遊んでばかりいる……」などとお説教をしているのかもしれない。 たぶん、だいたい、同じ量の日本語で語られていたら、同じ程度の意味を伝えているのではないかと想像する。表意文字と表音文字では取るスペースの分量が違うが、かといって一千倍違うと言うこともない。話し言葉とて同じことだろう。 これはなにか大したことだ。いろいろな言語がある。いろいろな環境の中で、それぞれの文化とともにそれが生まれ、精密化してきた。われわれをとりまく環境、もの、ことは、それぞれにおおいに違う。なので、雨を表す語彙だとか、雪を表す語彙だとかの数が大違いだということもあ