2011年、イタリアのパラッツオーロという小さな街に滞在していた水中考古学者の山舩晃太郎さん(当時27)。かの有名なタイタニック号の調査も行った研究機関であり、水中考古学において世界一の呼び声も高いアメリカの「テキサスA&M大学」に在籍し、世界的権威であるフィリップ・カストロ博士が率いるチームの一員として奮闘していた。パラッツオーロにやってきた目的は、アドリア海へと流れ込むステッラ川に沈没した木造船の発掘調査のため。2000年も前に沈んだ古代ローマ帝国の船だというが、晃太郎さんは「水の中は保存状態がいいんです。どんな作業でも一番最初に遺跡を目にしたときがゾクゾクしますね」と目を輝かせる。船の全体像を掴むためには、まず水に潜って調査を行う。水の中の視界は悪く、手元がようやく見える程度だ。特殊な機械で船に堆積した泥を吸い込むと、今度は水の流れに逆らいながらメジャーで船体の細部をミリ単位でひたす
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