上野駅のカメラ少年 鉄道写真が好きになる人には、何かしらのきっかけがあると思う。私の場合、それは1台のカメラだった。 小学5年生のとき、私は、写真好きの父にハーフサイズのカメラ「キヤノン・デミ」を買ってもらった。カメラは小学校の遠足に一度使ったきりで、半年ほどほったらかしていたのだが、春休みのある日、ふと上野駅に写真を撮りにいこうと思い立った。 当時は、鉄道ブームでもなかったし、鉄道雑誌を読んでいたわけでもない。上野駅なら、そのころ住んでいた浅草から近いし、いろいろな車両が見られるだろうという軽い気持ちだった。 地平ホームが20番線まであった時代である。薄暗い地平ホームにたくさんの人が行き来して、さまざまな車両が発着する様子は、いくら見ていても飽きなかった。 地平ホームで興味深かったのは荷物専用ホームだ。荷物車や郵便車が到着すると、たくさんの職員が出て積み下ろしをする光景が見られたものだ。