雑誌「歴史と人物」(中央公論社、1986年休刊)は、太平洋戦争の軍人証言録が売り物だった。証言を集めた若手研究者が、ベストセラー「独ソ戦」の著者・大木毅氏と戸高一成呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)館長だ▲2人が当時の見聞を語った対談本「帝国軍人」(角川新書)は、今に通じる含蓄に富む。旧軍将兵らが戦時中、いや戦後でさえも、いかに報告、公文書、日記、回想録、証言などで改ざんとウソと誇張を重ねたか。苦々しい秘話満載である▲日本軍が女性や子供を含む島民400人以上を虐殺したインドネシア・ババル島事件。広島第5師団の報告書は3回作り直され、赤裸々な事実描写が、最後はやむを得なかったという釈明に変えられていた▲元陸軍将校の親睦団体「偕行(かいこう)社」が戦後、南京事件の証言集をまとめたら、悪いことをしたという告白が多すぎた。ところが、「謝罪するしかない」と筋を通した編集責任者は辞めさせられ、当た