「これから起きるすべての医療事故が、ミトコンドリア異常症にこじつけられてしまう可能性もあるのではないかと危機感を抱きました。それ以上に、なぜ莉奈が亡くなったのかをはっきりさせたかったですし、明らかに容態が悪かった莉奈を放置し続けた病院の体質を問いたいという思いで、提訴に踏み切りました」 こう語るのは、2010年9月に済生会横浜市東部病院で長女の莉奈ちゃんを失った中島邦彰さん・朋美さん(ともに仮名)夫妻だ。莉奈ちゃんは亡くなる直前に、この病院で肝臓の組織を採取する「肝生検」という検査を受けていた。 警察による司法解剖で判明した死因は「肝生検に起因する出血死」。しかし病院や検査を担当した医師は、莉奈ちゃんの死因は世界でも極めて稀な疾患である「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」だと主張。肝生検時の過失によるものではないとして、医療過誤を認めなかった。