◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」 昨年の共同通信杯勝ち馬ファントムシーフが10日、右前浅屈腱炎の診断で9カ月以上の休養を要する見込みと発表された。 ターファイトクラブの会員から伝え聞いたところによると、会員向けに「損傷率30%」「幹細胞移植術を試みる」と、発表されたという。一般に重傷とされる損傷率に、悲嘆の声が飛びかっている。 現在、屈腱炎の主な診断方法は超音波画像診断(エコー)だ。機械(先端のプローブ)の発する超音波について、反射する割合がぶつかった組織の性状(主に硬さ)で異なることを利用し、生態内部を画像化する。液性成分に富む部分は超音波が反射しにくく透過するので、画像としては黒く抜ける。屈腱炎では、内出血や、炎症反応に対して集まってきたリンパ液によって患部は液性成分に富む状態になるため、患部でエコー像が黒く抜ける(低エコー部)。 屈腱炎の「損傷率」とは、腱断面に対する低エコー