専門家は別として、医学や生物学、さらに栄養学などに関心を持つ人にとって、一番注目される話題とまでは言えないかもしれないが、現在気になる話題は、糖鎖だろう。 ごく簡単に言えば、生命現象の解明はその暗号コードの解明になってきていて、20年前であれば、遺伝子、つまり核酸に集約されていた。ゲノム解析に期待されていたと言っていいだろう。が、その後解析が終わっても生命暗号の謎は残り(というか謎ばかり)、次にタンパク質構造に関心が移り、現在さらに糖鎖に向かっている。 そうした糖鎖に注目が集まるなか、市民レベルで糖鎖の基本と糖鎖研究の現状を解説した書籍はないだろうかと、ブルーバックスの新刊などを見ていたのだが、昨年末、岩波科学ライブリーから、それに適した『おしゃべりな糖 第三の生命暗号、糖鎖のはなし(笠井献一)』が出た。糖鎖について極力わかりやすく書かれていることと、実際身近な生活などで触れる生命現象との