紀州の殿様が残した南葵音楽文庫の保管と活用 2016年12月に和歌山県庁において,和歌山県(以下「県」)と公益財団法人読売日本交響楽団(以下「読響」)との間で南葵音楽文庫(以下「文庫」)の寄託契約調印式が行われた。以下,文庫の概要,寄託の経緯と内容,今後の活動などについて紹介する。 ●文庫の概要 文庫とは,紀州徳川家の第16代当主徳川頼貞(1892~1954年)が,私財を投じて収集し,戦後に補充された分を合わせた約2万点の西洋音楽関連のコレクション(楽譜,書簡,書籍)である。関東大震災や戦中・戦後の混乱時にあっても大きな散逸は免れたが,千葉県や福島県内の倉庫に保管されるなど,複雑な転遷を辿った。1967年の読売新聞社主催「南葵音楽文庫特別公開」展で展示された後,日本近代文学館(東京・駒場)において,研究者対象に公開された。1977年から読響が所有することとなり,以後原資料は公開されることな