一夜にして症状を緩和する特効薬はない 前回のコラムでも述べたように、日本の科学研究力は凋落の一途をたどっています。残念ながら何十年もかけて進行したこの病を、小手先の対応で治すことはできません。可能性があるとすれば、極めて当然ですが、優秀な若手の博士研究員(ポスドク)の育成でしょう。人を育てるのですから、それは一朝一夕にはできないことです。ただ、次世代のサイエンティストの育成に真剣に取り組まないかぎり、日本の科学研究に未来はありません。 今となっては日本でもメジャーな「ポスドク」は、元々アメリカで生まれた制度でした。日本では、90年代に「大学院重点化計画」というものを立ち上げた際に、アメリカをまねしてポスドク制度が広く導入されました。日本に研究者を増やし、日本の基礎研究力を強化するのが目的でした。1996年度から2001年度までの5カ年計画として閣議決定された科学技術基本計画では、「ポスドク