邦訳版 作者:Walter Isaacson Publisher : Simon & Schuster September 12, 2023 Hardcover : 688 pages ISBN-10 : 1982181281 ISBN-13 : 978-1982181284 対象年齢:一般(PG15) 読みやすさレベル:7 ジャンル:伝記 キーワード:イーロン・マスク、スペースX、テスラ、X(Twitter) ウォルター・アイザックソン著のイーロン・マスクの伝記は発売直後に読んだのだけれど、レビューを書くのに1ヶ月近くかかってしまった。 読んでいる間に思ったことは数多いのだが、それらを全部書き留めることはできないし、まとまりがつかない。そこで、しばらく考えようと思っているうちに1ヶ月が経ってしまったのだ。 読了から1ヶ月経っても強く印象に残っているのは、マ
周司あきらさんと高井ゆと里さんの『トランスジェンダー入門』(2023, 集英社)について、少し気になることがあったので、あまり形式ばらないかたちで感想を残したいと思います。 ※2023/07/22: [追記]『すばる』2023年8月号に掲載された高井ゆと里さんの「トランスジェンダーの定義を知りたいあなたへ」および読者らによる『入門』の語られ方について、少し追加しました。目次を参照ください。 簡単なまとめ 「定義」、「全体像がわかる」などの言葉は、トランスジェンダーやノンバイナリーの一部を「トランスジェンダーでない」と宣言してしまう効果がある。また、「入門」という枠組みによって、著者らは、解説したり定義したり全体像を提示したりできる権威のある存在として規定され、ほかのトランスジェンダーの人たちは一方的にこれらの行為のなされる対象にされてしまう。さらに、著者らもまた各々の立ち位置からのみしか考
2022年マライ・メントライン文芸賞は『ロマニ・コード』(角悠介)に決定! ロマ言語の探究解析を行う若手言語学者のフィールドワーク体験記であり、実は「丸山ゴンザレスや村田らむのルポルタージュに近い」など、熱く、濃く推しまくるマライ・メントラインの授賞の弁をどうぞ。 マライ・メントライン文芸賞を授与する 2022年、個人的に最高に凄かった&おもしろかった小説は、小学館『STORY BOX』誌に書いた通り『地図と拳』(小川哲)だ。が、もっと広義の「文芸」という観点からベストオブベストを選べと言われたら、これはもう『ロマニ・コード』(角悠介)しかない。よって私は重い腰を上げて本作にマライ・メントライン文芸賞を授与する。マライ・メントライン文芸賞とは、私が「めったに無い特殊で深いおもしろさ」を感じ、かつ、メジャーな批評家があまり取り上げなさそうな本に遭遇したときにのみ起動する、なんの権威もへちまも
紙の単行本、文庫本、デジタルのスマホ、タブレット、電子ブックリーダー…かたちは変われど、ひとはいつだって本を読む。気になるあのひとはどんな本を読んでいる? 各界で活躍されている方たちが読みたてホヤホヤをそっと教えてくれるリレー書評。今回ご登場いただくのは、ロシアをはじめ東ヨーロッパのアート系書籍を専門としてきた書店「Art Book Iskusstvo(イスクーストバ)」代表・稲葉直紀さんです。様々な縁が引きちぎられた世界を前に、稲葉さんが手に取った本は――。 ロシアがウクライナに侵攻したその日から、あらゆる繋がりが断ち切られている。ウクライナの人々は命を、生活を、日常を奪われ、多くの人が避難を余儀なくされ、家族との絆、故郷との絆を断ち切られている。またこの侵略を非難しロシアを脱出するロシア人も少なくないという。彼らもまた自国との繋がりを断つべきか苦しい選択を迫られている。 ロシアに対する
【飛ぶ教室】狙撃兵となった少女の真の敵とは 22/03/11まで 高橋源一郎の飛ぶ教室 放送日:2022/03/04 #文学#読書#世界情勢#戦争 放送を聴く 22/03/11まで 放送を聴く 22/03/11まで 作家・高橋源一郎さんがセンセイとなって、1冊の本をテキストに現代社会の課題やひずみを考察し、生き方の指南役となる「ヒミツの本棚」。今回のテキストは逢坂冬馬著『同志少女よ、敵を撃て』です。 第二次世界大戦の独ソ戦が舞台の作品でしたが、現在のウクライナ情勢と重なるところもあり、とても心が痛み、さまざま考えさせられました。当たり前のことですが、いま改めて平和の大切さを思わずにはいられません。 【出演者】 高橋:高橋源一郎さん(作家) 小野:小野文惠アナウンサー
著者:関川 夏央出版社:筑摩書房装丁:文庫(294ページ)発売日:1998-12-01 ISBN-10:4480034331 ISBN-13:978-4480034335 内容紹介: ―山田さん、結構おんなじこといいますね。「実はぼくはもうこの世の人じゃないんだ」―は?「実は昭和64年、ぼくは例のごとく酔っ払って階段から落ちた。そして死んだ」―は?天才老人の機知、警句、妖説、飄逸、健忘!おそるべき大作家の実像ここにあり!通いつめること一年有半。知られざる大作家の素顔がいま明される。 続・早く老人になりたい高校生の頃に、わたしの友人たちの間では「二十四歳で死ぬ」という構想が流行していた。 ランボー、ロートレアモン、ポール・ニザンの作品が好まれ、同時に彼らの生涯もたいへん愛好(?)された。二十四歳で亡くなったロートレアモンを除くと、ランボーもニザンも別に夭逝したわけではなかったが、文学との劇的
件名:『女帝 小池百合子』を読んで 投稿者:斎藤美奈子 森 達也さま ノンフィクション作家でもある貴君はお読みになったでしょうか。石井妙子著『女帝 小池百合子』(文藝春秋)。べつに読まなくてもいいんだけどね。 都知事選の前に出たこともあって話題になり、20万部のベストセラーだそうだ。SNS上では絶賛の嵐で、私もそれに乗せられて読んだんだけど、途中から具合が悪くなりそうだった。小池百合子に対してじゃないよ。この本に対してです。 ことに多くの「左派リベラル系男性論客」がこぞって激賞している(多くはないが、女性でも褒めてる人がいる)のを見て、絶望的な気持ちになり、いまでもまだ、半分くらい立ち直れていません。 この本の書評はいま出ている「ちくま」8月号(もうじき「ウェブちくま」でも公開になると思う)に書いたので、誰がどんな褒め方をしたかは、そちらを見ていただきたいですが、私はこの本、まったく評価で
Executive Summary すさまじく分厚いゲバラの決定版伝記。綿密で詳細な調査とインタビューはとにかく圧巻。キューバで長年暮らして関係者の資料を大量に閲覧、ゲバラ懐柔役だったはずの老練なソ連外交官から、恋する乙女まがいの赤面するようなコメントをモスクワで引き出し、最後の部隊の生き残りにスウェーデンまで出かけてヒアリング。すごい! 思想形成や、戦略的な評価といった大局的な視点はいま一つ薄い。だが、その調査が浮き彫りにする、ゲバラの人格的な信じがたいほどの魅力、およびそのとんでもない滅私奉公の独善ぶりは、これまでの伝記などで見られる、とても単純かつ純粋な理想主義者というイメージにかなり修正を迫るものではある。 そして本書はそのすさまじい調査により、ゲバラの最期についての決定的な証言を入手し、そのおかげで謎だったゲバラの埋葬場所まで明らかになり、ゲバラ遺体のキューバ帰還にまで貢献した—
闇の自己啓発会は2月8日、都内某所で稲葉振一郎『銀河帝国は必要か?』読書会を行いました(都合により、予定していた課題本を変更しました。楽しみにしていた方には申し訳ありません…)。調子の悪い人が多く、いつも以上に具合の悪い話が多くなった気もしますが、その模様をお伝えしていきます。 ※これまでの活動についてはこちらをご覧ください。 https://note.com/imuziagane/m/mbd28cf65025b ※【闇の自己啓発会】は読書会記事を募集しています。 https://note.com/imuziagane/n/n9123acc09bec ◇参加者一覧 【ひで】シス 目黒から新宿に引っ越しました。今回の引っ越しで10回目です。無職になりました。 役所【暁】 今までに8回引っ越しています。転職に向けて動き始めました。好きな異世界召喚系ゲームは、Xuse『永遠のアセリア』。 【江永
最終更新: January 16, 2008 (WED) 10:33 書誌情報 著者:川端裕人 題名:エピデミック 出版社:角川書店 発行:2007年11月30日第一刷 外形:四六判,509ページ 価格:税込み1,995円 ISBN:978-4-04-873801-9(Amazon | bk1) 川端君自身が書いている通り,『竜とわれらの時代』以来,久々の書き下ろしで「本格感」のある長編小説であった。他の作品も,それはそれで味わい深いのだけれども,やはり読み応えという点からすると,川端君には,ときにはこういう小説に取り組んでほしいと思う。川端君の「本格感」のある長編小説は,ただ小説として面白いだけではなくて,『夏のロケット』は航空宇宙工学,『リスクテイカー』は金融工学,『竜とわれらの時代』は恐竜学といった具合に,科学のある分野のわかりやすくて筋のいい入門書になっているという特徴をもつ。言っ
『君たちはどう生きるか』のエリーティズム 最近、4年前に書かれた『グロテスクな教養』(高田理惠子、ちくま新書)の書評のブログ記事をたまたま見かけた。私がこの本を読んだのもやはり4年ほど前だったが、第一章の「教養、あるいは「男の子、いかに生くべきか」」の中で、戦前の教養主義の一典型として、吉野源三郎著の『君たちはどう生きるか』が何度か言及されていたことを、この書評を読むまですっかり忘れていた。 君たちはどう生きるか (岩波文庫) 作者:吉野 源三郎岩波書店Amazon1937年(昭和12年)に刊行された、小説仕立ての少年向け教養書、啓発書である。主人公のコペル君(ニックネーム)が、日常の出来事や中学校生活のさまざまな体験を通して、世界と自己との関わりについて目を開き、成長していく様が描かれている。 著者の吉野源三郎は戦後、総合雑誌『世界』の初代編集長になり、反戦平和主義者としての活動もした所
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています いま、このタイミングで読むべき一冊は、K・ラウスティアラ&C・スプリグマン『パクリ経済』だ。 パクリ問題が、たびたび起こる。いまも、ティラミスブランド問題が炎上中だ。 「2012年にシンガポールでつくった私達のオリジナルのブランドロゴがコピーされ、只今日本で使用できなくなってしまいました。私達が大好きな日本でこのような事が起きた事を、大変残念に思っています」 2012年8月にシンガポールで創業し、2013年8月には日本でも販売開始していた「ティラミスヒーロー」が公式サイトで訴えた。先に商標登録されて、ブランド名とロゴが使えなくなったのだ。 ティラミスヒーロー 旧サイト ネットでは「海外のブランドを、国内企業が商標登録などを法的処理を完遂しながら丸パクリしたケースではないか」と疑う声も出ている(ねとらぼ記事より)。著作権法違反や不正
まだ、できた当初のゲンロンカフェに「社会学と現代思想―その微妙な関係」という北田暁大の講演を聞きに行ったのが2013年。そのときのアフターのトークで「宮台真司の『サブカルチャー神話解体』の現在版みたいな調査と分析をやっている」という話を聞いたのですが、その調査と分析がようやく書籍化されました。 その時に、「『サブカルチャー神話解体』の分析が今でもけっこう当てはまっていたりする」ということを言っていた記憶があるのですが、この本の共著者名にクレジットされている「解体研」とは「『サブカルチャー神話解体』という神話を解体する」という意味合いで付けられた名称だといいます(347p)。 このように、この本は宮台真司の『サブカルチャー神話解体』のある種の有効性を認めつつもその意味を批判的に再検討する、というややアクロバティックな内容となっています。 さらにこの本で批判的な乗り越えが目指されているのがブル
ちくま文庫『ファッションフード、あります。』(畑中三応子著)に平松洋子さんが寄せてくださった解説を転載。同時代を体験してきた平松さんならではの視点で、本書の読みどころを鮮やかに提示します。 本書を初めて手にしたときの衝撃は忘れがたい。食べ物をめぐる世相のありさま、または日本人と食べ物との関係を「ファッションフード」というわずか九文字で看破する著者の批評眼に感じ入った。 そもそも、ファッションは一過性の性質を持ち、フードは普遍的な意味合いを有する言葉である。ところが、「ファッションフード」としてひとつの言葉に結び合わさると、化学反応が生まれる。いっけん耳ざわりよく聞こえるが、「日本文化への皮肉と愛をこめて」編みだされたこの造語は、節操なく新しいものを取り入れてきた日本という国、日本人という民族の本質までも照らし出す。「本格的なファッションフード成立元年」一九七〇年以降、国を挙げて燦めかせてき
腐女子の心理学 彼女たちはなぜBL(男性同性愛)を好むのか? 作者: 山岡重行出版社/メーカー: 福村出版発売日: 2016/06/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 本書は社会心理学,パーソナリティ心理学の視点から「腐女子」についてのリサーチを行った結果をまとめた本だ.元々マイノリティとそれに対する差別の心理(正確には「少数派の意識と,多数派の少数派に対する意識」)をリサーチしていた著者が,学生から「腐女子」をテーマに卒論を書きたいと相談されることが多くなり,基礎的な文献がないこともあって自ら行ったり指導してきたリサーチを本にしたという経緯を持つ.だからこの分野の基礎的な文献になることを目指した専門書であり,構成的には多くのリサーチテーマについて,それぞれテーマの解説,調査方法,結果,考察という形で書かれており,かなり硬派な本に仕上がっている. なお本書では「腐
【オンライン視聴可能:イベント情報・月刊ALL REVIEWS】2023/1…2023/11/27 (月) 19:00 - 20:30 米光 一成 × 豊崎 由美、タリアイ・ヴェーソス著 朝田 千惠 /アンネ・ランデ・ペータス 訳『氷の城』(国書刊行会)を読む書評アーカイブサイト・ALL REVIEWSのファンクラブ「ALL RE… 【アーカイブ視聴可能:イベント情報・月刊ALL REVIEWS】2023/1…2023/10/27 (金) 19:00 - 20:30 東 浩紀× 鹿島 茂、東 浩紀著『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)を読む書評アーカイブサイト・ALL REVIEWSのファンクラブ「ALL REVIEWS 友の会」の特典対談番組「月刊ALL REVIEWS」… ALL REVIEWS 友の会 第5期募集中!(2023年11月枠[10枠])「ALL REVIEWS 友の会」第5期
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