旅日記 「モスクワの地下鉄」 「ゴクン、ゴクン、ゴクン」と不気味な音と共に、俺の身体は地下へと運ばれている。 地獄に落ちる時もこんな感じなんだろうか? 延々と続く階段を見下ろすと、心臓がバクバク鳴りはじめた。 持病の高所恐怖症は、地下でも変わらないらしい。 モスクワの地下鉄は、核シェルターを前提に設計されただけあって、信じられないぐらい深い所を走っていた。 こんなエレベーターは初めてだった。 さすが、共産主義の総本山モスクワの地下鉄だ。 もう4,5分はエスカレーターに揺られているのだが、一向にゴールが見えてこない。 もし、ここで、後ろの奴が転んだら・・などと考えるのは俺だけだろうか? いかん、持病の閉所恐怖症までも頭をもたげてきた。 やっと、エレベーターの階段が沈みだした。 社会主義のエレベーターでも、仕組みが同じなら、この後水平になって俺をホームへと滑り込ませてくれるだろう。 「トンネル