乗客はたがいに息をひそめつつ、他の客の様子をうかがう。 赤信号で停車したバスが、アイドリングストップでエンジンを切ると車内は静寂に支配され、ウインカーの音だけが静かに響く。この交差点を右折すれば、次の停留所まで200メートルもない。 「もう、だめだ……、おれが、おれが押すしかない……」誰にも気づかれぬよう、肘掛けに設置してあるボタンをぐっと押しこむ。 「ピンポン、つぎとまります」無機質な音声がスピーカーより放たれると、車内に張りつめた空気がいっきにとける。 夜の底が白くなった。停留所にバスが停まった。 こんなふうにバスの降車ボタンを押す瞬間こそ、路線バス乗車の醍醐味だろう。 そんな、バスの降車ボタンを集めている、降車ボタンマニアがいる。 降車ボタンパネルを見せてもらう 降車ボタンマニアとして有名な、石田岳士さんのお宅にうかがった。 降車ボタンマニアの石田さん、タモリ倶楽部ほか、各メディアに