「胸さわぎの腰つき」の衝撃から44年。以来ずっと桑田佳祐は自由に曲を書き、歌ってきた。日本語を巧みにビートに乗せ、「誘い涙の日が落ちる」といった独創的な言葉を紡ぐ。情感豊かな歌詞で日本人の心を鷲づかみしながら、エロくキワどい言葉を投げ、愛と平和を正面から訴える。はたして桑田佳祐は何を歌ってきたのか――。サザンとソロの全作品のうち、26作の歌詞を徹底分析したスージー鈴木氏の新著『桑田佳祐論』から一部抜粋、再構成してお届けする。(文中敬称略) 「砂まじりの茅ヶ崎」 「そのとき歴史が動いた」という言い方は、今や、ありとあらゆる歴史本における常套句となっているが、少なくとも日本ロック史において、この《勝手にシンドバッド》という曲が、歴史をググッと動かしたということに、異論を挟む向きは少ないだろう。 日本ロック史の転換点。《勝手にシンドバッド》以前/以後──。 そんな《勝手にシンドバッド》の歌い出し