一九八七年に開始された現代本格ムーヴメント(第三の波)は、筆者の判定するところでは二〇〇六年をもって終焉した。 笠井潔『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』(南雲堂/二〇〇八年十一月)の「はじめに」(5頁)から いま新本格ミステリムーブメントは、衰退期にある。 限界研[編者]『21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊』(南雲堂/二〇一二年七月)の飯田一史による序論(10頁)から “終焉”そして“衰退期”。 かつて、そう烙印を捺された本格ミステリはその後どうなったか。 東野圭吾『容疑者Xの献身』(二〇〇五年)から今村昌弘『屍人荘の殺人』(二〇一七年)まで、平成後期の国内本格ミステリの動向を総括し、令和本格の進むべき道を探る。 社会の多元化がもたらした不可知論的状況に、虚構の名探偵たちはどのように立ち向かったのか。 従来の本格ミステリからすれば周縁と受けとめられがちな特徴を、整合性に重きを置く推