携帯電話が普及し始めた頃人間には100年早いと、評者は思った。スマホの登場で1万年説に改宗したのち、最近はあと100万年は必要だったと考えるに至っている。 なにしろデジタルのテクノロジーは恐ろしい。人間のあらゆる営みをデータ化し、カネにして(マネタイズ)、心の奥底までを支配する。利便性や生産性の類(たぐい)とは引き換えにできない、してはならない価値が、いとも簡単に破壊されていく。
携帯電話が普及し始めた頃人間には100年早いと、評者は思った。スマホの登場で1万年説に改宗したのち、最近はあと100万年は必要だったと考えるに至っている。 なにしろデジタルのテクノロジーは恐ろしい。人間のあらゆる営みをデータ化し、カネにして(マネタイズ)、心の奥底までを支配する。利便性や生産性の類(たぐい)とは引き換えにできない、してはならない価値が、いとも簡単に破壊されていく。
東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)を巡り、現職の小池百合子知事に出馬要請した区市町村長の有志52人の1人、日野市の大坪冬彦市長が30日の記者会見で、「小池知事側から『支援してくれますか』という打診があった」「(小池氏側からの)応援依頼だったのが、なぜか(首長側からの)出馬要請になってしまった。心外だ」と述べたことを受け、小池知事は31日の定例会見で「私からの依頼はしておりません」と話した。 会見で「知事サイドから支援を依頼したのか」と問われると、小池知事は「知事サイドの意味がよくわかりませんけど、はっきり申し上げると、私からの依頼はしておりません」と説明。「23区の長の方々、多摩島しょの方々とはいつも、ご意見を伺いながらしっかり連携して都政を進めてきた。そうした中で、有志の皆さま方から立候補の要請をいただいたものだと私は理解しております」と述べた。 出馬要請は、東京23区長でつ
東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)を巡り、現職の小池百合子知事に出馬要請した区市村長の有志52人の1人、日野市の大坪冬彦市長は30日の記者会見で、「(小池氏側からの)『応援依頼』だったのが、なぜか(首長側からの)『出馬要請』になってしまった。心外だ」と述べた。 大坪市長は2021年の市長選では、小池知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」の推薦も受けて当選した人物。一体、何があったのか。(立川支局、デジタル編集部)
ところで、この著者を、この圧縮本を、簡便に書評できるだろうか。危険な思想家は要約不能。とはいっても、思想とはそもそも取扱注意の危険な代物だ。平岡は常に全身をもって、ジャズ・ポップス・大衆小説・大衆芸能など多様な文化事象の細部にもぐりこみ、飛躍的に「革命」論を語ってきた。対象に密着しすぎる愛好家や研究家のようにではなく、騒がしい煽動(せんどう)家のように――。 黒本(上巻)は「危険思想の軌跡」として「犯罪革命論から窮民革命論へ」と旋回していく著者の初期論考が。赤本(下巻)は「大衆文化と革命」として「歌謡曲、ジャズ、新内、落語……大衆文化の過激な底力」へと共振していく円熟期の仕事が、選択される。配列はほぼ年代順。 本書には二通りの読み方がある。一つは編者が編んだ指定にしたがってページを追って読み進む。一つは千ページのどこでもいい、パッと適当に開いたところからちょっとずつ読む。そのうち、黒本はレ
1970年代の米国は評価が難しい。戦後の「偉大な米国」と80年代の冷戦最終盤のレーガン期に挟まれた「特徴のない時代」とされがちだ。本書は米国の歴史学者が音楽や映画など文化の比喩を縦横無尽に紐解(ひもと)きながら、70年代こそが21世紀の米国を築いたことを示す野心的な政治史だ。 第1は右と左の分断である。73年、連邦最高裁で人工妊娠中絶の合法判決がでた。トランプ前大統領が保守系判事を指名して覆したあの判決である。フェミニズムの一里塚となった一方、中絶を認めない米国のキリスト教保守の政治参加を招いた。60年代から、米国では共和党内でゴールドウォーターなど右派強硬派の波が渦巻いたが、中絶問題が文化的対立を決定的にした。「文化戦争」は70年代の「対抗文化」に手がかりがある。
会社員ら給与所得者の定額減税では、政府が減税額を給与明細に記載するよう義務付けたため、事務やコストの負担が増える企業の担当者から悲鳴が上がっている。支持回復に結び付けたい岸田政権の思惑を見透かしたうえで、制度の問題点を指摘する意見も聞かれる。 定額減税 物価高対策として昨年の税制改正大綱に今年の実施が盛り込まれた。年収2000万円以下の納税者と扶養家族が対象で、減税額は1人当たり所得税3万円、住民税1万円。会社員ら全国に約5000万人とされる給与所得者については、企業など給与支払者が6月から処理を始める。政府は関連法の施行規則を改正し、企業に所得税減税額の給与明細への記載を義務づける。所得税は扶養家族が多く6月に減税しきれない場合、7月以降に繰り越して差し引く。住民税は6月分は徴収せず、減税後の年税額を7月から11カ月間、均等に徴収する。
2021年夏、新型コロナウイルスの流行により1年延期となった東京五輪・パラリンピックが開かれた。世界のトップ選手による熱戦は多くの人に夢を与えた一方で、経費の膨張やコロナ禍の開催などを巡り批判も多かった。小池百合子都知事は大会を「レガシー(遺産)」と自賛するが、大会後も都民の負担は続いている。(原田遼)
冒頭で著者の井上は告白する。大江健三郎の小説はずっと苦手だった、と。実はここが本書の眼目である。大江を読むとは、安易に共感し感動することではない。むしろ違和感を受け止めることなのだ。 振り返れば「奇妙な仕事」「飼育」などの鮮烈な初期作品から、『芽むしり仔撃ち』「セヴンティーン」『個人的な体験』などの問題作、そして『万延元年のフットボール』という頂点に至るまで、大江作品は強烈な臭気に覆われてきた。性や死や暴力の横溢(おういつ)は読者を戸惑わせる。そんな作品群の勘所をとらえるには、とりあえず表層的なストーリーから距離を置き、垂直水平といった軸や、らせん状の葛藤など力動的な感覚をとらえたい。著者はそんな読みの手ほどきをした上で、こう問う。 大江は戦後民主主義の守り手として社会運動にコミットし、障害を抱えた長男に寄り添った。国内各賞からノーベル文学賞まで広く受賞し社会的な評価も高い。でも、そんな枠
世界の至るところで大きな荷物や水の入った桶(おけ)などを頭にのせて運ぶ人たちがいる。かつては日本にもいた。 どういうわけか頭上運搬をする人は女性が多い(男性は肩に担ぐ傾向がある)。時には自分の体重よりも重い荷物を頭にのせて起伏の激しい道を歩くこともある。
昭和末年生まれの私は「若者の活字離れ」と叱(しか)られながら大人になった。本の売れない時代なのは今も変わらないが、一方で、人々が四六時中インターネットに接し、電車に乗れば乗客のほとんどがスマートフォンをのぞき込んでいるという状況になると、活字離れは人類史上もっとも「文字」に接する時代への通過点だったのかと思えてくる。 人の歴史に文字が登場したことで、思考や文化にどのような影響がおこったのか、さまざまな研究や事例を紹介するのが本書である。文字やそれを載せる媒体も、常に人類と寄り添いながら変化を続けたことが見えてくる。人々の読む文字が近年、紙からネットへと大きく移行し、それがまた生活のあり方を大きく変容させたような局面が、実はこれまでもたびたび繰り返されてきたらしい。 評者が驚いたのは人が文字を読むとき、黙読するか、音読するかという問題。印刷術の登場以前の西欧の古代・中世では、主に人の手で書き
大日本主義とは、国力(軍事・政治・経済)の増強を最優先の国家目標とし、もって安全と繁栄を確立しようとする。吉田松陰を起点とし、藩閥と軍閥が推進した戦前日本の国家方針であった。 他方、小日本主義とは、質実(経済と生活の質)の向上を最優先の国家目標とし、もって平和と豊かな社会を実現しようとする国家方針である。戦後の日本国憲法によって規定されている。 本書は、上田藩(長野県上田市)出身の赤松小三郎(こさぶろう)らによる六つの憲法構想を比較分析し、結果として小日本主義、そして日本国憲法の思想的な源流を明らかにしている。いずれも天皇を絶対的な主権者とすることなく、具体的な議会像を示すもので、なかには民選議会や基本的人権を規定する構想もあった。
<著者は語る>データの独裁許すな 『ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙(だま)されるのか』 統計学者 ジョージナ・スタージさん 数字にはインパクトがある。「失業率5ポイント増」「外国人による犯罪件数が10万件増」。そう聞けば、誰もが不安を感じるだろう。しかし、疑問を持たずに、その数字を受け入れていいのだろうか。英下院図書館の上級統計学者、ジョージナ・スタージさんはあっさり否定した。「失業や犯罪の定義、さらには数え方で数字は変わる」 英国で失業の定義は30回以上も変わった。失業対策のアピールや失業手当の支給を抑えるために、政府が変えてきた。外国人の犯罪件数も排外的な人が数えれば、微妙な事案を犯罪に数えがちだ。同図書館の統計は世界で最も信頼度が高い部類だが、スタージさんは「数字を作るのは結局は人。適切に数えるのは難しく、不確かな統計で政策を誤らせたケースは枚挙にいとまがない」と肩をす
神楽から民謡まで日本の伝統音楽は従来「ハーモニーのない劣った音楽」とされてきたが、実は「全人類の宝」だというのが本書の主張だ。 だが単純な「日本すごい本」ではない。作曲家、尺八奏者として世界各地で演奏し、米バークリー音楽大学などでも学んだ著者は、湿潤で傾斜地と森林の多い日本の自然環境や労働環境、生活環境が独自の姿勢や呼吸法を生み、母音中心の日本語が聴覚の優れた解析能力を育んだと分析。そのため日本人は微小な音量や変化の聞き取りに長(た)け、倍音に敏感になって、それが日本音楽の特徴を生んだとする。 小唄などで情感を込める時にわずかに音高と音量を下げ、速度を遅くすること、スズムシや風鈴の音を愛(め)でること、擬音語や擬態語が非常に多いこと、伝統芸能に多い「語りもの」には言葉と音楽の境界がないこと、外国起源の邦楽器も倍音が出やすいように改良されたことなどの例に加えて著者は、日本人は自然の音や虫の音
世界最大級の漢和辞典『大漢和辞典』は全15巻で収録5万字、1文字目の「一」だけで72ページ。しかし、実はその出版はいかに苦難の果てに人々が実現させたものだったか-。それを書き上げたのが出版元で同辞典も担当した著者だ。発端は個人的関心だった。 「大修館書店の創業者で『大漢和辞典』を発行した鈴木一平。その鈴木の社葬で、『大漢和辞典』の著者の諸橋轍次(もろはしてつじ)先生が弔辞を読んだ時、『著者代表』ではなく『友人代表』だったことが印象的で、2人による編さんに関心を持ち始めました」 鈴木は東京・神保町の書店で修業後に創業。関東大震災で店は焼失したが、印刷の基となる紙型(しけい)を妻が避難させたため、直ちに受験参考書の発行を再開できた。巨利を得た鈴木は漢和辞典の制作を決意。鈴木からの1年半の説得の後、諸橋は著者を受諾した。
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