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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (19)

  • 女の「お尻」は何に縛られてきたのか『お尻の文化誌』

    女のお尻のすばらしさについては、室生犀星が力説している。人間でも金魚でも果物でも、円いところが一等美しいのだという。人間でいちばん円いところは、お尻になる。故に、お尻が最も尊くて美しい場所なのだ。どうせ死ぬなら、お尻の上で首をくくりたいという。同感だ。 しかし、『お尻の文化誌』によると、女のお尻というものは、様々な視線を浴び、いろいろな道具に覆われ、拘束されてきた。女のお尻というものは、そのままの状態であったことは少なく、絶えず評価され、比べられ、鍛えられ、覆われ、曝されてきたというのだ。 「女のお尻」を歴史から語ったものが、書になる。お尻そのものに焦点を当てたのはジャン ゴルダン『お尻とその穴の文化史』だが、書はお尻そのものに加えて、「そのお尻を見てきた視線」に焦点を当てている(←ここが面白いところ)。 女のお尻は誰が見てきたのか? 「お尻」の部分は、そのままでは自分で見ることができ

    女の「お尻」は何に縛られてきたのか『お尻の文化誌』
    hharunaga
    hharunaga 2024/03/19
    “お尻そのものに焦点を当てたのはジャン ゴルダン『お尻とその穴の文化史』だが、本書はお尻そのものに加えて、「そのお尻を見てきた視線」に焦点を当てている”。著:ヘザー・ラドケ。原書房。
  • 現代用語のエロ知識『アダルトメディア年鑑2024』

    FANZAに日参してるから、よく知っていると思っていた。だが、大まちがいだった。いかに自分は分かっていないか、エロがどれほど広くて深くて激しいかを思い知らされた。 『アダルトメディア年鑑2024』は、「エロ」と呼ばれる性メディアの現在を可能な限り網羅的に切り取ったものだ。マンガ、ゲーム、アニメ、実写動画、小説、音声といった媒体からの紹介や、商業・同人、合法・地下、生身・CG・生成AIといった切り口で、エロの今が詰め込まれている。 私が知ってるのなんて、マンガとゲームの中の、ほんのちょっぴりの欠片でしかなく、それでもって現代エロを語ろうとしていたのには恥ずかしくなる。 とはいえ、私だけに限ったことではないようだ。執筆者たちの座談会で分かったのだが、みんな自分の沼しか知らない。エロが好きだからといって、全ての沼に浸っているわけではなく、好きな所しか知らない。エロとはそういう、個人的で密やかなも

    現代用語のエロ知識『アダルトメディア年鑑2024』
    hharunaga
    hharunaga 2024/03/08
    「音声には他ジャンルにはないアドバンテージがあるという。それは、音声同人はどんなにエロく作っても、基本的に刑法第175条(わいせつ物頒布罪)には触れない所だ」 ←へぇ~。
  • 認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』

    小説の面白さはどこから来るのか? 物語のオリジナリティやキャラクターの深み、謎と驚き、テーマの共感性や描写の豊かさ、文体やスタイルなど、様々だ。 小説の面白さについて、数多くの物語論が著されてきたが、『小説の描写と技巧』(山梨正明、2023)はユニークなアプローチで斬り込んでいる。というのも、これは認知言語学の視点から、小説描写の主観性と客観性に焦点を当てて解説しているからだ。 特に興味深い点は、小説の表現描写が、人間の認知のメカニズムを反映しているという仮説だ。私たちが現実を知覚するように、小説内でも事物が描写されている。 認知言語学から小説の描写を分析する 通常ならメタファー、メトニミーといった修辞的技巧で片づけられてしまう「言葉の綾(あや)」が、ヒトの、「世界の認知の仕方」に沿っているという発想が面白い。これ、やり方を逆にして、認知科学の知見からメタファーをリバースエンジニアリングす

    認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』
    hharunaga
    hharunaga 2023/11/04
    「特に興味深い点は、小説の表現描写が、人間の認知のメカニズムを反映しているという仮説だ」 ←確かに興味深いが、小説と詩はどのように違うか、といった点は論じられているのかな? 著:山梨正明。
  • ヨーロッパ偏重のローマ帝国から離れる『岩波講座 世界歴史 03』

    皇帝ネロの時代、ローマは火の海となった。炎は6日と7晩かけて、首都の大半を焼き尽くした。 「都を新しくしたいネロの陰謀」という風評をもみ消そうとして、ネロ帝はキリスト教徒を放火犯に仕立て上げ、火刑に処したという。 しかし、書よると、これはキリスト教徒のプロパガンダらしい。 ネロの時代において、ユダヤ教とキリスト教は、はっきりと分化しておらず、「キリスト教徒」という集団では認知されていなかった。あくまでユダヤ教内での対立として、暴動を引き起こしていたという。 暴動の首謀者としてクレストゥス(Chrestus)とユダヤ人たちが追放されたという記録があるが、写を引き継ぐ中で、イエス・キリスト(Christus)に書き換えられたのではないか、という説だ。つまり、刑に処せられたのはユダヤ人集団であり、キリスト教徒だけを狙い撃ちしたわけではないというのだ(※)。 一方、キリスト教徒に対する「迫害」

    ヨーロッパ偏重のローマ帝国から離れる『岩波講座 世界歴史 03』
    hharunaga
    hharunaga 2022/04/03
    “ローマは、圧倒的多数かつ多様な「被支配者」や、その外側の西アジアの人々とのつながりの中で成り立っていた。…ヨーロッパ人が見たいローマではなく、逆側・裏側・外側からのローマが見えてくる”
  • 「人はなぜ笑うのか」への最新回答『進化でわかる人間行動の事典』

    「笑い」とは何か? まず、「笑い」を定義するところから始めよう。 だが、このやり方だと行き詰まる。 古来より、賢人たちは様々な答えを用意してきた。アリストテレス「動物の中で人間だけが笑う」から、ベルクソン「機械的なこわばり」まで、さまざまな説明が試みられてきたが、遅かれ早かれ上手くいかなくなる。 このアプローチでは、笑いに関する性質を調べ上げ、人が笑う理由を探すことになる。その背後には、原因となる質があるはずだという前提が隠れている。普遍的・不変的なエッセンスを抽出し、それにより定義づけるのだ。 すると、定義にハマらない「笑い」の扱いに困ることになる。あるいは、定義どおりなのに笑えない反証が見つかる場合が出てくる(しかも多々ある)。嫉妬心の解消(プラトン)、暗黙の優越感(ホッブズ)、不一致の解消(カント、ショーペンハウエル)などがそうだろう。 機能に着目する 質論の行き詰まりを回避する

    「人はなぜ笑うのか」への最新回答『進化でわかる人間行動の事典』
    hharunaga
    hharunaga 2021/08/20
    “「人はなぜ笑うのか」という疑問に対し、笑いの「機能」に着目し、その行動がどのように適応的だったかを考える。そうすることで、笑いが実に様々な役割を果たしてきたのかが見えてくる”
  • 原文で読むからこそ味わえるヘミングウェイの文章の味『ヘミングウェイで学ぶ英文法』

    正直に告白すると、ヘミングウェイは苦手だった。 簡潔で、説明不足で、ぶっきらぼうな文体だったから。 しかし、このを読んで、考えが変わった。 例えば、”Cat in the rain” における、雨宿りをしている子を見かけたが、夫に告げるシーンだ。 “I’m going down and get that kitty,” the American wife said. “I’ll do it,” her husband offered from the bed. “No, I’ll get it. The poor kitty out trying to keep dry under a table.” 書の解説で、「現在進行形(I’m going)と will の違いが分かりますか」と問いかけられる。 え? be going ~って、結局、『~するつもり』だから、will と一緒で

    原文で読むからこそ味わえるヘミングウェイの文章の味『ヘミングウェイで学ぶ英文法』
    hharunaga
    hharunaga 2021/04/19
    “形容詞や感情を示す言葉がないのだ、ヘミングウェイには。…「文章は形容詞から腐る」と言ったのは開高健か”。著:倉林秀男、河田英介。アスク出版。
  • 「世界文学」の日本代表が夏目漱石ではなく樋口一葉である理由

    世界文学全集を編むなら、日本代表は誰になる? 漱石? 春樹? 今なら葉子? 審査は、世界選手権の予選のようになるのだろうか。投票で一定の評価を得た著者なり作品が、トーナメントを勝ち抜いて、これぞ日本代表としてエントリーするのだろうか。 スポーツならいざ知らず、残念ながら、文学だと違う。春樹や葉子ならまだしも、夏目漱石は予選落ちである。 なぜか? 『「世界文学」はつくられる』に、その理由がある。近代日語の礎を築いたことで誉れ高い漱石でも、世界的に見た場合、西洋文学のコピーとして低く評価されているという。 「世界文学」での漱石 『坊ちゃん』『』が有名だし、教科書で『こころ』を読んだ人もいるだろう。何と言っても千円札の顔だから、諭吉よりは見慣れている。やたら有難がる人もいるのは、ザイアンス単純接触効果じゃね? と思うのだが、彼の造語とされる「沢山」「反射」「価値」「電力」は、人口に膾炙してい

    「世界文学」の日本代表が夏目漱石ではなく樋口一葉である理由
    hharunaga
    hharunaga 2020/11/09
    「世界文学」と言っても、〈日本を中心にした世界地図〉と〈アメリカを中心にした世界地図〉の違いくらい、様々なものがあるということでしょうねw
  • 人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』

    人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』 わたしの人間観を更新する一冊。 もっと正確に言うと、進化心理学・行動経済学・認知科学の研究を通じ、わたしが抱いている「人間とはコレコレである」人間観がアップデートされつつあることを教えてくれる。 書は、吉川浩満氏の論文・インタビュー集である。発表媒体によりモチーフは異なれど、テーマは「人間とは何か?」になる。「人間とは何か?」という問いかけを、「人間がどのように”見える”か?」という人間観にした上で、その変遷を、人工知能、認知バイアス、利己的遺伝子、人新世という様々な斬り口から掘ってゆく。 よくあるサイエンス・ノンフィクションと異なるのは、「(人が)どうなっているか」の科学的解説に、道徳哲学の「(人が)どうあるべきか」議論をぶつけているところ。おかげで、認知科学の進展を

    人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』
    hharunaga
    hharunaga 2018/09/06
    “今がまさに「人間とは何か?」という定義が更新されている時代なのだとゾクゾクしてくる(半分期待・半分恐怖)”。著・吉川浩満。
  • 『思想のドラマトゥルギー』はスゴ本

    Tumblrで出会った寸鉄がこれ。 “あなたを突き刺し、打ち砕き、恥じさせ、叩きのめした後に手を伸ばして学びに導くものこそ名言、名著。俺の言いたいこと全部言ってくれてる系は、あなたのしょぼいプライドを満足させて金をむしり取る道化。” 人でいうなら読書猿さんやな、厳しくかつ優しく導いてくれる。まさかとは思うが、もしご存じなかったならば、今すぐ[読書猿]へ行きなさい。ブログが膨大すぎるなら、エッセンスを凝縮した『問題解決大全』と『アイデア大全』を読みなさい。きわめて実践的な名著であり、あなたの人生の財産となること請け合う。 そんな読書猿さんが、何十年もかけて読んでいるが、『思想のドラマトゥルギー』だという([とても遅い読書:10年かけて読んだのこと])。先に断っておくが、けして難しいではない。対談集で、筆致は口語体のままを残し、軽妙洒脱という言葉がぴったりの、たいへん読みやすいだといえ

    『思想のドラマトゥルギー』はスゴ本
    hharunaga
    hharunaga 2018/05/01
    「同時代人のガリレオを持ち出し、デカルトが自覚していた問題を炙り出す。真実を語ればおのずから伝わるというのは嘘であることを、ガリレオ自身よく分かっていた」。著:林達夫・久野収。
  • あまりにも無色透明な絶望『絶望を生きる哲学』

    理想主義がまぶしい。濁ったおっさんには青すぎて懐かしすぎる。 これ、中学生でかぶれたら、一生治らないヒューマニストになっていただろう。池田晶子の著作から箴言を選り抜いているが、どの言葉も強く厳しく、主語がでかい。 時代が悪いというのなら、あなたが悪いのだ。何もかもすぐにそうして時代のせいにしようとするあなたのそういう考え方が、時代の諸悪のモトなのだ。なぜ自分の孤独を見つめようとしないのか、なぜよそ見ばかりをしているのか。不安に甘えたくて不安に甘えているくせに、なお誰に不安を訴えようとしているのか。(太字化はわたし) 自分の体験から語ろう、体験としての思想をもとうなどというのこそ、戦後民主主義の寝言なのである。体験からしか言えない人は、体験が逆ならば、逆の意見を言うだろう。だから個人の意見などいくら集めてもしょうがなのだ。 第一印象は茨木のり子。それも「倚りかからず」を目指しているように見え

    あまりにも無色透明な絶望『絶望を生きる哲学』
    hharunaga
    hharunaga 2017/08/12
    “役に立つタイミングからして死亡保険というべき「生命」保険。実質的にやってることは監視なのに「防犯」カメラ。タイトルの、絶望という言葉に希望を込めたいのではなかろうか”。池田晶子著。
  • 巨人の肩から眺める『現代思想史入門』

    ガルシア=マルケス『百年の孤独』で、数学だけに異様な興味を示す天才が出てくる。まともな教育を受けたこともなく、あらゆる文明から遠く離れた廃屋に一人で暮らし、すべての情熱を数学に注ぎ込み、一生をかけて二次方程式の解法を独力で見つけだす。 男は天才だが、愚かなことだと思う。ただ一人の思考だけで、まったくのゼロから、二次方程式の解の公式を導くまで才能を持っているにもかかわらず、それだけで一生を費やしてしまったのだから。男は幸せだっただろうが、もし教育を受けていたならば、その思考はさらに先の、もっと別ところへ費やすことができただろうに。 「こんなこと考えるのは私だけだ!」と叫びたくなるとき、このエピソードを思い出す。オリジナルなんて存在せず、要は順列組み合せ。デカルトやサルトルといった哲学者でさえも、完全に無から生み出したわけではなく、時代の空気に合わせ、過去の知的遺産をまとめたり噛み砕いた、知の

    巨人の肩から眺める『現代思想史入門』
    hharunaga
    hharunaga 2016/07/20
    「生命、精神、歴史、情報、暴力という5つの層で時間軸を横断」「だから、この一冊を読むことで、現代思想を5周するわけだ」 ←面白そう。
  • ホラーで人間を理解する『恐怖の哲学』

    一流の哲学者が気で遊ぶと、ここまで面白いのか! 科学と哲学の二刀流で、ホラーから人間を探索する試み。最初は哲学的アプローチだったのが、次第に科学からの知見を取り込み、最終的に両者が手を携えて、「人はここまで分かっている」ことと、「ここからもっと(科学も哲学も)人間の深いところまで行ける」ことを指し示す。その知的探索がめちゃくちゃ面白い。 ざっくばらんな語り口で、「なぜホラーが怖いのか」から始まって、怖いのにホラーにハマるメカニズムを解析し、最終的にその恐怖を"怖さ"たらしめている深いところまで降りてゆく。そこには、意識は科学で説明可能か? というとんでもなくハードな問題が待ち構えており、ラストは哲学的ゾンビとの対決になる。結末は、映画に出てくるリビング・デッドのようにはいかないが、ある意味『ゾンゲリア』のラストのようで皮肉が利いている(著者はホラー好きなくせに怖がり&痛がりなので、ダブル

    ホラーで人間を理解する『恐怖の哲学』
    hharunaga
    hharunaga 2016/02/23
    「一流の哲学者が本気で遊ぶと、ここまで面白いのか!」。戸田山和久・著、NHK出版新書。
  • ウンベルト・エーコ『異世界の書』がスゴい

    汝の名は冒険者か? ならば我を求めよ! 知の巨人が、また奇ッ怪なを出した。それは古今東西の「実在しない場所」を紹介したもので、ギリシャ古典から現代ベストセラーまで大量の文献を渉猟し、エーコ一流の案内と膨大な引用からなる幻想領国地誌集成だ。面白いのは、いわゆる「虚構の場所」を扱っていないところ。アトランティスやシャンバラ、ユートピアやフウイヌムなど、多くの人がどこかに実在する、もしくは実在したと気で信じ、その信念が幻想を生み出した場所が、書の俎上に上っている。 読み進むにつれ、この「伝説と虚構」の境界が揺らぎはじめて愉しい。想像力をどこまで信じられるかというテーマになるからだ。現実の世界は一つかもしれない。だが現実と並行して、先人たちの幻想が生み出す無数の可能世界を巡るうち、想像は現実の一部であることを、まざまざと思い知らされる。この幻想のもつリアリティこそが、書を貫くテーマになる。

    ウンベルト・エーコ『異世界の書』がスゴい
    hharunaga
    hharunaga 2016/01/07
    「現実の世界は一つかもしれない。だが…、先人たちの幻想が生み出す無数の可能世界を巡るうち、想像は現実の一部であることを、まざまざと思い知らされる」 ←思弁的実在論(唯物論)っぽい?w
  • 『アジア史概説』はスゴ本

    「交通」から見たアジア史。 文明の原動力を、陸塊の形態に還元したマクロ史観の大胆な試みとして、ジャレ・ド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』[レビュー]があるが、宮崎市定『アジア史概説』は、これを「交通」に還元して俯瞰する。西アジアのペルシア・イスラム文明、東アジアの漢文明、その間のインドのサンスクリット文明、そして東端の日文明───各文明は互いに交通という紐帯によって緊密に結び付けられており、相互に啓発しあい、競争しあい、援助しあいながら発展してきたダイナミズムを、一気に、一冊で読み通すことができる。 あたりまえなのだが、ざっくり歴史を古代/中世/近世と分けるとき、文明は軌を一つにして変遷しない。にもかかわらず、西洋史のスケールに囚われてしまい、アジアの各文明とのタイムラグを見落としてしまう(もちろん、ヨーロッパが最も「遅れて」いた)。現代を“支配”している欧米の価値観で振り返るとき、この

    『アジア史概説』はスゴ本
    hharunaga
    hharunaga 2015/07/13
    “文明の原動力を、陸塊の形態に還元したマクロ史観の大胆な試みとして、ジャレ・ド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』があるが、宮崎市定『アジア史概説』は、これを「交通」に還元して俯瞰する”
  • 人生が捗るトルストイ『戦争と平和』

    忘れっぽいので書いておく。わたしは死ぬし、あなたも死ぬ。なぜなら生きてるから。わたしの命は時である。時は、微分すると今になり、積分すると人生になるから。 では、この死ぬまでの時は、何のためにあるのか? それは、幸せになるため。人生は、それを使って幸せになるためにある。小説の最高傑作として掲げられるトルストイ『戦争と平和』には、この究極のライフハック「幸せになる方法」が書いてある。 いきなり答えを書く。「なぜ生きるのか」に衝き動かされ、自分探しに翻弄された主人公ピエールがたどり着いた結論だ。たえず探し求めていた「人生の目的」から解き放たれ、自分が完全に自由であることに気づく場面で、エピローグの直前にある。 ことばではなく、理屈ではなく、直接の感覚で、もうずっと前にばあやから聞かされていたことを悟ったのだ。それは、神さまはほらこれですよ、ここですよ、どこにでもいますよ、ということだった。 これ

    人生が捗るトルストイ『戦争と平和』
    hharunaga
    hharunaga 2015/01/21
    “『戦争と平和』とは「人はなぜ平和を求めて戦争をするのか」に答えるシミュレーターなのだ。”
  • 空も飛べるはず『飛ぶ力学』

    飛行力学の肝心な点を、一冊にまとめたもの。 紙ヒコーキからボーイング、ステルス戦闘機、プテラノドンを例に、空飛ぶ力学のエッセンスを解説する。「きっと今は自由に」飛ぶためには、揚力だけでは不十分で、流れに対し機体をコントロールする必要がある。 「実機と紙ヒコーキはどこが違うか」→重心と静安定 「フォークボールはなぜ落ちる」→レイノルズ数 「操縦と運転はどこが違うか」→縦の姿勢制御 「飛行機と“空飛ぶ絨毯”の違い」→誘導抵抗 「ヘリコプターのローターが大きい理由」→空中静止 など、章タイトルの疑問に答える形で、風見安定、流れの質、機体サイズの影響、操縦の極意を説明する。人類が「飛ぶ理屈」を探り出す歴史を追ったものが『飛行機物語』である一方で、そこから「飛ぶ質」を掴みだしたのが『飛ぶ力学』といえる。 東大教授のやさしい語り口調ではあるものの、数式やグラフがかなり出てきてて、理解に手こずる。わ

    空も飛べるはず『飛ぶ力学』
    hharunaga
    hharunaga 2014/04/13
    “(『風の谷のナウシカ』の「メーヴェ」は)あの翼サイズでは空力的に飛べないだろうと思っていたが、ひょっとしてあの世界の「人」のサイズそのものが小さいのではないだろうか”
  • 女は尻だ。異論は認めない『FRaU 2014/3』

    女は尻だ。異論は認めない。 女は尻だ。異論は認めない。 すべては尻であり、尻にある。美しさ、強さ、優しさを兼ね備えた、あらゆる魅力と質の表象であり、かつ全人類の故郷であり桃源郷であり、世界でいちばん穏やかで不滅で争いのない場所である。君に、おっぱい山頂への征服欲があることは理解できる。だが、そこは四足から二足へ移行する際、成熟のバロメーターとして採用された代替品だ。山頂を踏破したら清水で潤すべく、谷へ降り蟻の門渡りを目指せ。お尻を賛美することは、おっぱいを否定することにならない(逆もまた然り)。 この真理に全力を注いでいるのが、『FRaU』3月号だ。「おしりは女のバロメーター!おしりが上がると人生が上がる!」とばかりに、みんなの大好きな魅惑のお尻たちをビシバシ紹介する。尻爛漫の春なのだ。それだけでなく、お尻はダイエットの勘所であり、美尻を目指すトレーニングがキレイにも痩せにもつながること

    女は尻だ。異論は認めない『FRaU 2014/3』
    hharunaga
    hharunaga 2014/03/02
    「すべては尻であり、尻にある。美しさ、強さ、優しさを兼ね備えた、あらゆる魅力と本質の表象であり、かつ全人類の故郷であり桃源郷であり、世界でいちばん穏やかで不滅で争いのない場所である」 ←熱いなw
  • なぜ小説を読むのか?なぜ小説を書くのか?『実践小説教室』

    伝わる・揺さぶる小説を書くために必要なものが分かる。 それは書き手自身の経験であり、熱意になる。その見つけ方、酌み取り方、表し方が、読み手の背中を押すように解説されている。テクニック的な面から言えば、文学賞を取るための「べからず」集がまとめられている。あたりまえなことを、あたりまえに教えてくれる良い。 タイトルに惹かれて技術的なノウハウを知りたい人は、いきなり2章を読むといい。短編か長編か、テーマはどこから掘り出すのか、人称をどうすればテーマに沿うかがまとめられている。基的なものばかりだが、興味深く感じたのが、「いま、文学賞を狙うなら」という視点で尖ったアドバイスがあるところ。 例えば、三人称で書く場合の手法として「複数の現在」をお勧めしてくる。小説的現在が二つ以上あると、物語は劇的に迫力が得られるからといい、各章ごとに交互に小説的現在が入れ替わる構造を紹介する。この手法を取り入れた作

    なぜ小説を読むのか?なぜ小説を書くのか?『実践小説教室』
    hharunaga
    hharunaga 2013/09/17
    小説を書いている人って、全国で何人くらいいるんだろう…。
  • 40超えたら突き刺さる『タタール人の砂漠』

    ある種の読書がシミュレーションなら、これは人生の、それも自分の人生の「手遅れ感」の予行演習になる。若い人こそ読んで欲しいが、分からないかも。歳経るごとにダメージ増、over 40 からスゴ。 この感覚は、カフカの『掟の門』。かけがえのない人生が過ぎ去って、貴重な時が自分の手からこぼれ去った、あの「取り返しのつかない」感覚に呑み込まれる。 大事なことは、これから始まる。だからずっと待っていた。ここに来たのは間違いだから、気になれば、出て行ける。けれど少し様子を見ていた。習慣のもたらす麻痺が、責任感の強さという虚栄が、自分を飼いならし、日常に囚われ、もう離れることができない―――気づいたらもう、人生の終わり。 カフカの再来と称されたブッツァーティは、『神を見た犬』でも示すとおり、寓意性の高い幻想譚を描く。物語の面白さにうっかり釣り込まれると、極めて当たり前の、普遍とも言えるメッセージを突付

    40超えたら突き刺さる『タタール人の砂漠』
    hharunaga
    hharunaga 2013/06/08
    北の砂漠からの襲撃を期待し続けてしまうという逆説と、結局何も起こらずに終わってしまうのではないかという不安。今日的な主題。
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