女のお尻のすばらしさについては、室生犀星が力説している。人間でも金魚でも果物でも、円いところが一等美しいのだという。人間でいちばん円いところは、お尻になる。故に、お尻が最も尊くて美しい場所なのだ。どうせ死ぬなら、お尻の上で首をくくりたいという。同感だ。 しかし、『お尻の文化誌』によると、女のお尻というものは、様々な視線を浴び、いろいろな道具に覆われ、拘束されてきた。女のお尻というものは、そのままの状態であったことは少なく、絶えず評価され、比べられ、鍛えられ、覆われ、曝されてきたというのだ。 「女のお尻」を歴史から語ったものが、本書になる。お尻そのものに焦点を当てたのはジャン ゴルダン『お尻とその穴の文化史』だが、本書はお尻そのものに加えて、「そのお尻を見てきた視線」に焦点を当てている(←ここが面白いところ)。 女のお尻は誰が見てきたのか? 「お尻」の部分は、そのままでは自分で見ることができ