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ブックマーク / saavedra.hatenablog.com (6)

  • 司馬遼太郎人気を支えた「大衆歴史ブーム」はなぜ生まれたのか?福間良明『司馬遼太郎の時代 歴史と大衆教養主義』 - 明晰夢工房

    司馬遼太郎の時代-歴史と大衆教養主義 (中公新書 2720) 作者:福間 良明 中央公論新社 Amazon 「司馬さんの書かれるものは日外史とでも呼ぶべき種類の史書ではあるまいか」とは、有吉佐和子の『坂の上の雲』評だ。このように、司馬遼太郎作品はたんなる歴史小説の枠をこえ、一種の教養として読まれている。司馬作品は物語中にしばしば「余談」がさしはさまれ、そこでは司馬の政治や軍事、世論などへの見解が自在に語られる。こうした特徴は吉川英治や山岡荘八といった、それまでの歴史作家の作品にはないもので、読者の歴史への知的関心をかきたてるものだった。なぜ司馬の「歴史教養」は時代に求められたのか。『司馬遼太郎の時代 歴史と大衆教養主義』によれば、司馬作品の人気を支えていたのは、昭和50年代に起きた「大衆歴史ブーム」だという。 昭和50年代に司馬作品を愛読していたのはおもに中年男性だが、かれらは教養

    司馬遼太郎人気を支えた「大衆歴史ブーム」はなぜ生まれたのか?福間良明『司馬遼太郎の時代 歴史と大衆教養主義』 - 明晰夢工房
    mfluder
    mfluder 2024/05/11
    “日々の仕事に追われ、人文知を学ぶ余裕のなくなった人々にも、教養志向の名残りはある。こうした人々の需要にこたえるのが、歴史だった”
  • 古代ギリシア民主政の真実とは?歴史学者が「衆愚政」への異議を唱える - 明晰夢工房

    古代ギリシアの民主政 (岩波新書 新赤版 1943) 作者:橋場 弦 岩波書店 Amazon 古代ギリシアの民主政は、しばしば「衆愚政」とセットで語られる。だが『古代ギリシアの民主政』によれば、『歴史学者が「衆愚政」という、価値判断の込められた語を用いてギリシア民主政を説明することは、今日まずありえない』という。実は衆愚政という言葉自体が、もともと民主政を批判するために用いられたもので、中立的な表現ではないのだ、と書では主張されている。では、民主政を批判するためのレッテルが、古くから用いられてきた理由とはなんなのか。 『古代ギリシアの民主政』では、その理由のひとつを、民主政を批判する側の声が大きかったことに求めている。古代アテネは民主政の国だったため、一部のエリートが思い通りに国を動かすことができず、不満を抱いた彼らは民主政を批判した。その批判はプラトンやアリストテレスの著作として、後世

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  • 【書評】御成敗式目を「歴史の覗き窓」として鎌倉時代を理解できる良書!佐藤雄基『御成敗式目 鎌倉武士の法と生活』 - 明晰夢工房

    御成敗式目 鎌倉武士の法と生活 (中公新書) 作者:佐藤雄基 中央公論新社 Amazon 中世法は面白い!と感じられる一冊だった。これはすぐれた御成敗式目入門書であるだけでなく、この法を通じて鎌倉武士や地頭・女性・庶民の姿を浮かび上がらせてくれる良書だ。つまり、これを読めば鎌倉時代の社会がみえてくる。江戸時代や室町時代にくらべて今一つつかみにくい鎌倉時代のイメージが、書を読むことで明確になってくる。御成敗式目は、鎌倉時代を知るための「歴史の覗き窓」でもあるのだ。 御成敗式目には、鎌倉時代の治安の悪さを実感できる条文が多い。たとえば、4章では「悪口の咎」について解説されているが、これは文字通り悪口=根拠のない誹謗についての規定だ。悪口を言うと、流罪か召し籠め(他の御家人への身柄預け置き)になるのだが、これは悪口への罰としては重過ぎるように思える。だがこれには理由があって、書によれば悪口が

    【書評】御成敗式目を「歴史の覗き窓」として鎌倉時代を理解できる良書!佐藤雄基『御成敗式目 鎌倉武士の法と生活』 - 明晰夢工房
  • 世界史の鼓動が聴こえてくる漫画『天幕のジャードゥーガル』2巻までの感想 - 明晰夢工房

    天幕のジャードゥーガル 1 (ボニータ・コミックス) 作者:トマトスープ 秋田書店 Amazon 天幕のジャードゥーガル 2 (ボニータ・コミックス) 作者:トマトスープ 秋田書店 Amazon これはある意味、世界史そのものを描いた作品だ。かつてモンゴル史家の岡田英弘は「世界史はモンゴル帝国からはじまった」と主張したが、そのモンゴル帝国が東西に領土を広げていく時期を舞台に展開する『天幕のジャードゥーガル』は、まさにモンゴル史が世界史と重なっていく時代のストーリーとなっている。主人公のシタラ、のちのファーティマ・ハトゥンはモンゴルの後宮に仕えることになるので、この作品も一種の「後宮もの」ではある。だがモンゴル帝国が東西のさまざまな文化を含みこむ大帝国であり、シタラ自身もイランでイスラームの高い文化を身につけた元奴隷なので、シタラがモンゴルに身を置くこと自体が高度な文化交流の意味合いを持って

    世界史の鼓動が聴こえてくる漫画『天幕のジャードゥーガル』2巻までの感想 - 明晰夢工房
  • 天然理心流はなぜ多摩の豪農に伝わったのか?須田努『幕末社会』 - 明晰夢工房

    幕末社会 (岩波新書 新赤版 1909) 作者:須田 努 岩波書店 Amazon 天然理心流を開いた近藤内蔵助は、江戸の両国薬研堀に道場を構えていた。だがなかなか門人が増えなかったため、多摩の農村で出稽古をはじめ、この地域に土着していた八王子千人同心たちに剣術を伝えていったことはよく知られている。やがて多摩地域の百姓身分のなかから才能のある者が近藤家へ養子に入り、二代目以降の近藤家の名跡を継いでいく。宮川勝五郎、のちの近藤勇もこうして天然理心流の四代目を継ぐことになった。 saavedra.hatenablog.com だが、もともと千人同心たちの武術だった天然理心流は、やがて豪農たちの剣術へと変わっていく。その背景には、幕末期特有の多摩地域の社会情勢がある。須田努『幕末社会』によると、天保期には百姓一揆の作法が崩壊し、蜂起した無宿たちは暴力の行使をためらわなくなった。百姓一揆とは来、幕

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  • 【感想】逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』 - 明晰夢工房

    同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 作の帯には桐野夏生の「これは武勇伝ではない。狙撃兵となった少女が何かを喪い、なにかを得る物語である」という一文が書かれている。「喪い」が先に来ているのは、この物語が大きな喪失で幕を開けるからだ。主人公のセラフィマはドイツ兵に生まれ故郷の村を焼かれ、母を殺され、外交官としてソ連とドイツの仲立ちをするという夢を失った。つまりセラフィマはすべてを失ったのだ。 生ける屍と化したセラフィマを鍛えることになるのが、凄腕の狙撃兵であり、鬼教官でもあるイリーナだ。セラフィマの母を敗北者と罵り、思い出の器を次々と破壊するイリーナは、ドイツ兵にも劣らぬ冷酷な存在に映る。生きる気力を失っていたセラフィマを支えたのは、このイリーナへの怒りだった。ドイツ兵もイリーナも、敵はすべて殺す──この固い決意のもと、セラフィマは狙撃兵として成長していくことに

    【感想】逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』 - 明晰夢工房
    mfluder
    mfluder 2022/04/08
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