大阪教育大付属池田小学校の児童殺傷事件に遭い、歯科医となった松田拓馬さん=大阪府池田市で2024年5月25日、北村隆夫撮影 背中が血で真っ赤に染まり、目の前で弱っていく下級生をただ見ていることしかできなかった。「いつか誰かの命を助けられる人になりたい」。少年は次第に医療の道を志すようになる。きっかけは、23年前、社会を揺るがす、ある事件に遭遇したことだった。 初夏の日差しが照りつける5月下旬、松田拓馬さん(30)は、かつて学校生活を送った校舎の正門に立っていた。亡くなった児童8人の名が刻まれたモニュメントを眺め、あの日の出来事に思いを巡らせる。 2001年6月8日午前10時過ぎ。大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)の2年生だった松田さんは、校舎1階にある2年東組の教室にいた。2時間目終了後だった。突然、廊下から刃物を持った男が乱入し、目の前にいた女子児童の胸付近を刺した。女子児童は口から血