「空気」という言葉の悪用 かつて、山本七平は日本人組織の特徴として「空気」による決定に注目した。なぜ日本は勝ち目のない戦争に向かったのか。なぜ無意味な戦艦大和の沖縄特攻が実行されたのか。いずれも、「空気」に支配され、「空気」が最終決定者だった、という。 この同じ現象が、今でも起こっている。今年、注目された「忖度」という言葉は、実はこの「空気」という言葉と密接に関係している。 国有地の取引をめぐって首相夫人に相談したと主張する籠池氏。首相あるいは首相夫人の気持ちをめぐって不思議な力が働き、それを忖度して官僚が動いたと主張した。つまり、「空気」が存在し、それに官僚が動かされ、異常に安い値段で国有地が購入できたというわけである。 もしこのように最終決定者が人ではなく「空気」ならば、だれも責任を追及できない。もうこれ以上、議論の余地はないのである。こうして、空気論は無責任論へと行きつく。 このこと