2012年10月07日10:09 カテゴリ本 「自然」から「作為」へ 本書の初版は1952年、収録されている論文が書かれたのは戦時中だが、いまだに現役だ。もう古典の地位を獲得したといってもいい。私が本書を読んだのは学生時代で、当時は「丸山眞男の限界」が語られることが多かったが、最近久しぶりに読み直して、その意外な新しさに感銘を受けた。 たしかに20代で書かれた論文は観念的で、文献学的には疑問もあるが、丸山が一生を通じて追究した「自然」と「作為」という問題が本書では鮮明に打ち出されている。ここでは国家を自然の秩序とする朱子学が伊藤仁斎や荻生徂徠によって解体されて本居宣長に至る江戸時代の思想史が描かれ、近代社会の本質を作為による自発的結社に求める丸山の思想が、ヘーゲルやウェーバーを踏まえて論じられている。 日本人が初めて「古層」を超える普遍的な理念と闘ったのが、江戸時代の儒学だった。そこではス