さる3月26日、48年にわたって続いた長寿番組、『おかずのクッキング』が最終回を迎えた。土井善晴は父の勝からバトンを受け継ぎ、時間に追われる現代人のために料理の真髄を軽妙な口調で、じつに30年以上も語り続けた。その副読本として売られているテキストの最終巻を買って読み、私はあまりの内容に絶句し、風呂場でKindleを握りしめたまま、ちょっと泣いた。 これは全日本人が読むべき「暮らしのなかに組み込むための料理のバイブル」であると同時に、忙しい自分と心豊かに暮らす自分を両立させるための……つまり、プラモを作るときのテキストとしても最高に役に立つ一冊なのだ。 土井先生の考え方はこうだ。人間は食事を作っている「暇」なんかそもそもない。毎日生きるのに必死な中で料理をするのだから、そのベースにまずは一汁一菜の考え方を取り入れるべきである。米を炊いている間に味噌汁を仕立て、そこに手近なものを入れて食べれば