企業は重層的かつ複雑に構成された分業取引関係の中にあり、仕入先の先の先まで特定することは困難であるし、日常的には知る必要もないのかもしれない。宅配便がほぼ日本全国に翌日には配達されることからもわかるように、私たちはサプライチェーンを支える優れた輸送サービスを享受している。近年ではサプライチェーンは近隣の東アジアを中心に海外にも拡張されており、そうなると調達先の労働コストの安さというメリットも加わって、生産性はさらに高まる。このように組織化された取引関係のネットワークは、日本の産業競争力の源泉にもなっている。しかし、平時にきわめて高い効率性を示す日本産業のサプライチェーンは、生産性上昇を追求して細分化・広域化するほど細いリンクの数が増えて複雑化し、大規模自然災害等が引き起こす予期せぬ断絶への脆弱さを増すことにもなる。実際に東日本大震災の直後、被災地以外でも部品の調達に困難をきたして生産水準の