※本稿は、個人的な見解を表明したものであり、筆者の所属する組織の見解を示すものではありません。また、固有名詞のカタカナ表記は一般的な表記に合わせています。 イランに潜伏するクロコダイル写真:Wirestock 紫のスカーフで金髪を覆った長身の女性が、テヘラン郊外のイマームホメイニ空港に到着する。彼女は、ペルシャ語はもとより、イランに関するあらゆる知識を完璧に叩き込まれた英国秘密情報部:MI6のエージェントだ。英国大使館の「臨時代理大使」という肩書きを隠れ蓑に、イランへ密かに送り込まれて来た。しかし、彼女の動向は、イラン・イスラム革命防衛隊の諜報部隊に完全に掌握されていたのである。 これは、イラン国営放送の人気スパイ・スリラー『Gando(ガンドォ)』(注1)のシリーズ第2作13話の内容だ。しかし、このエピソードの放送(4月2日夜)を最後に突然の終わりを迎え、「続きは大統領選挙後まで持ち越し
※本稿は、個人的な見解を表明したものであり、筆者の所属する組織の見解を示すものではありません。また、固有名詞のカタカナ表記は一般的な表記に合わせています。 『AGHA’ZADEH』 うら若いイラン人女性がメルセデスベンツに閉じ込められ、断末魔の叫びとともに車体ごとスクラップにされ、四角い鉄の塊となった残骸から鮮血がしたたる、という強烈なオープニング。筆者の中では、『進撃の巨人』第一話以来の衝撃だった。 これは、イラン版ネットフリックス「Namava」で大ヒットしたドラマシリーズ『AGHA’ZADEH(アーガーザーデ)』の第一話冒頭シーンである。コロナ禍のセミ・ロックダウン下、イラン人も、我々と同様、閉じ込められた自宅で持て余した時間を埋めるように、ネット・ストリーミングで映画やドラマの世界へ没入した。 ※筆者提供 このドラマでは、「アーガーザーデ」(注1)と呼ばれる権力者の子息たちが、ドバ
「ひどいよドクロちゃん。何がひどいって全部ひどい」 (OVA「撲殺天使ドクロちゃん」第2期4話より) この記事ですが、タイトルに掲げました通り、青木健『ペルシア帝国』(講談社現代新書 2020年)を読んでの感想や批評、および古代ギリシア史を学んだ人間からのツッコミです。 『ペルシア帝国』がお手元にあって、なおかつどんな問題点があるかを把握したいという人向きの記事ですので、「面白ければヨシ!」という方にはオススメしません。 また、私の専門分野の都合上、本書全体の4分の1程度、アカイメネス朝に関わる部分のみを批判の対象としています。これ以外の時代・地域の問題点を把握したい方は以下の記事やレヴューが参考になります。 ・春田晴郎先生の連続ツイート https://twitter.com/HarutaSeiro/status/1307841405193080832 ・「青木健著『ペルシア帝国』で確認
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
今回のイランのデモは、単発的なもので、暗号化チャット・アプリ「テレグラム」などによって火に油が注がれた面もあるので、いずれ鎮静化する性質のものかも知れません。 しかしデモのニュアンスは(ちょっといつもと違うぞ)と感じさせるものがあります。 【最高指導者ハメネイ師退陣要求】 まず市民の第一の要求が最高指導者ハメネイ師の退陣を要求している点です。最高指導者に対する批判は不敬罪に相当し死刑になる犯罪であり、それを市民が平然と叫んでいるところから判断し、市民は政府を恐れていない様子が伝わってきます。 【米国傀儡政権時代へのノスタルジア】 第二にモハンマド・レザー・シャー・パーレビ皇帝に対するノスタルジアが出ている点です。レザー・シャーはイランの近代化、西欧化を推進した人としてなつかしがられています。 実際、1979年にイラン革命が起きる前は、テヘランは「ロスアンゼルス・イースト」という愛称が付けら
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く