この小さな店が次に進出したのが首都圏と関西。商品は毎日広島から東京へ空輸する。本店同様、行列が絶えない人気を誇る。 八天堂の土俵であるパンという市場はそもそも飽和している。農林水産省の生産動態調査によれば、全国の食パンの生産量は1981年にピークを迎え、それ以降は漸減している。かろうじて微増を続けていた菓子パンも、1990年代の半ばからは頭打ちになった。惣菜パンや調理パンも2000年頃から伸びなくなった。 国民1人当たりの生産量で見ると状況はさらに厳しい。1970年代半ば以降、その生産量はほとんど変わっていない。つまり、戦後から食生活の変化と人口の増加で伸びてきたパンの消費量がすでにその時期に飽和していたのである。そして、今後は人口の減少と高齢化でさらに消費量が縮小していくことが容易に予想される。 この大変に厳しい市場環境の中で、いまでこそ、クリームパンに特化して大繁盛している八天堂だが、