昇降機から出ると、どこか寒々しい空間が広がっていた。壁は乳白色のリノリウムで、室内にあるのは寝台が二つと簡素なデスク、それに応急処置用の医療機材などだった。奧にあるスライド式のドアは呪術錠によって固く閉ざされている。コルセスカは両手で気を失った男を抱えながら、病院のような部屋だという感想を抱いた。 トリシューラは非常時の為に、第五階層内に幾つか隠し拠点を設けていたらしい。階層間の狭間という名の【地下】に存在するそこは、「とりあえずの避難用だから居住性は期待しないで」という前置きがあったにしては、三人が入っても狭さを感じない程度の快適さを保っていた。 「それで、彼は完全に【追放】できたのですか?」 傷付き倒れた青年を寝台に横たえて一通りの呪術治療を終え、続いて重傷のコルセスカ、半壊したトリシューラも各々自らをどうにか正常な活動ができる程度のコンディションに戻した後。 用意されたパイプ椅子に座