最近、吉田太郎氏の『「没落先進国」キューバを日本が手本にしたいわけ』(築地書館、2009年)という本を読んでいるのだが(これはすごく面白いキューバ・リポートです)、その中に、「したたかな小国の生き残り戦術」と題する6ページほどのコラムがある。これは、「人間を含めてすべての生物は利己的な存在だが、利他的行為には合理的な根拠がある」という「人間行動進化学」の認識を、生物学や人類学、さらにゲーム理論の成果を絡めて説明したもので、特に興味深いのは、「囚人のジレンマ」と「繰り返し囚人ジレンマ」の違いを述べているくだり。 「囚人のジレンマ」とは、プリンストン大学の数学者アルバート・タッカーが考えた事例で、「「協力」するか「非協力」か、二人のプレイヤーがどちらかひとつの態度を選択するゲーム」を想定したとき、「片方が裏切れば、出し抜かれた相手は大きな損失を被る」、そうすると、「どちらも相手から出し抜かれま