この3月で大学院を修了する。 今は地方都市に住んでいるけど、就職先は東京。 24年間生きてきたが、俺は女というものを知らない。 先日、行きつけのインドカレー屋で夕飯を食べていると近くの席から学生風カップルの会話が聞こえてきた。 「俺が小さい時、奇跡が2回起こったんだよね〜」 「え〜?なにそれ?教えて教えて!」 「1回目は3歳くらいの頃、お父さんとお母さんと一緒にフランス料理に行ったんだよ。 そしたら俺、お父さんとお母さんがお会計してる時にいなくなっちゃって。 店の中を一生懸命探したんだけどいなかったらしくって、外まで探すことにしたんだって。 そしたらお店を出たところの信号をハイハイで渡ってたんだって!」 「え〜?なにそれすごーい!」 「俺、まだ生きてるの本当に奇跡なんだよね」 「確かに!すごいね〜!」 たまたま耳に入ってきた”奇跡”の話を聞いて、俺はため息で心臓が飛び出てしまいそうになった