自然の生態系には明瞭な境界はなく、森林や草原、河川の間を移動する生物・生物遺骸・栄養塩類 (系外資源流) が、それらを利用する生物の成長や繁殖に影響を及ぼすことが知られています。しかしながら、こうした生態系のつながりが、生物の生活史やその多様性維持にどれほど貢献するかはほとんどわかっていませんでした。 京都大学生態学研究センター 佐藤拓哉 准教授 (研究当時、神戸大学大学院理学研究科) と神戸大学大学院理学研究科 田中達也・上田るい (大学院生) は、夏に森林から河川に供給される陸生昆虫 (系外資源流) が、河川に暮らすサケ科魚類のアマゴの成長を高めることで、海に降ってサツキマスになろうとする個体の頻度を高めることを明らかにしました。 本研究は、森や川といった生態系間のつながりが、生物の生き方の多様性 (=川と海を回遊する移住行動の多様性) を維持することを解明したものであり、今後の生態系