私は君に、鋏を届けに シオマネキという蟹がいる。彼らは大人になる前に、自身の片腕を切り落とす。 車窓を飾る海岸線が流れていく。シーズンオフの海辺は彩りを潜め、人影といえばそれぞれの居場所を独り占めにするサーファーや釣り人が砂浜に散見されるばかりである。その人影も列車が進むにつれまばらに消えていき、閑散とした風景に見覚えもないまま、私は理由のない郷愁を抱く。 通り過ぎていく砂浜のどこかに、湿った砂をかぶったまま置き去りにされた荷物を、忘れてしまっているような気持ちになる。私は残りの駅を指で折
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