昭和13(1938)年、日本で初めて高等文官司法科試験(現在の司法試験)に3人の女性が合格し、弁護士への道を開いた。このうち、のちに裁判官となった三淵嘉子(よしこ)をモデルにし、女性が社会で活躍するのが難しかった時代に前を向いて乗り越えていく様を描いたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」が人気だが、三淵と同時に合格した中田正子の人生もまた、女性の生き方を切り開く「時代の先駆者」の歩みだった。 「生意気だから落とした」正子は三淵、久米愛とともに同年10月15日に合格、当時の新聞は快挙を大きく報じたが、この合格には「序章」があった。試験は筆記と口述の2本立て。3人の中で正子だけはその前年、筆記試験に合格(270人のうち唯一の女性)していたのだ。 「口述で不合格とされたのです。ある本の中に、当時の試験委員の言葉として『ああ、あれは生意気だったから、落としたんだよ』と記述されています」 正子の