サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
GPT-4o
blog.goo.ne.jp/yasuharutokuda
SARS-CoV-2のRT-PCR検査について、私たちが提言しているのは、公衆衛生学的な目的、すなわち防疫目的の検査で使うことです。防疫検査であり、診断検査ではありません。 診断と防疫は目的が異なり、防疫検査では、被検者がCOVID-19に感染しているかどうかを診断するための検査ではなく、被検者が「感染性」を有するかどうかを確認するための検査となります。 感染伝播を予防するための待機が必要かの判断に使うのです。 防疫のためのスクリーニング検査では、対象者が感染しているかどうかがゴールドスタンダードではなく、感染性 (infectiousness)または伝播力(transmissibility)です。この防疫目的での検査では「体の中のどこかの細胞内にSARS-CoV-2が居て悪さをしている」という、COVID-19感染の有無は、もはやゴールドスタンダードの役割ではなくなり、リング上から場外に
しかもこれは診断検査ではなくなり、防疫(伝播を予防するための待機が必要かの判断)のためのスクリーニング検査となります。これに関しては、対象者が感染しているかどうかではなく「感染性infectiousnessまたは伝播力transmissibility」があるかどうかと考えてみるのはいかがでしょうか。 基本的に咳のない無症状の人ですので、発声による感染伝播となります。この場合、鼻咽頭・唾液などの上気道中のウイルス量または排泄量(viral load or shedding)をみるPCRがゴールドスタンダード検査となります(厳密にはウイルス培養だとは思いますが、臨床的にはRT-PCR検査)。この防疫目的に限定すると「体の中のどこかの細胞内にSARS-coV-2が居て悪さをしている」というCOVID-19感染はゴールドスタンダードではないと思います。感度特異度はゴールドスタンダード検査との比較で
2020年4月14日 沖縄の医療現場は今、大変な状況下にあります。危機管理とは「最悪の事態も想定して準備すること」です。沖縄でこのまま急性期医療機関に患者が殺到すると、本格的な医療崩壊になります。全国ではPCR検査が重症者と濃厚接触者に事実上制限されているため、実際の感染者数を過小評価しています。検査されていない軽症者や無症状者はかなりの数おり、隔離されずに感染が拡大していると考えられます。感染者が増えると、その中から重症者が出てきます。沖縄には全国各地からフライトを通して移入し、それから市中感染が拡大しています。下記のグラフは沖縄での今後の予測モデルです(國谷紀良氏作成:4月11日までのデータによる)。4月上旬よりRt>1となっています。仮にR0=1.68のペースで拡大すると県内での1日患者数は9000人を超えます。 この感染症に関しては軽症でもPCR検査は必要で、早期診断し、感染者を早
異常な呼吸音を呼吸副雑音(肺雑音)と呼ぶ。 呼吸副雑音には断続性と連続性がある。 その他として胸膜摩擦音がある。 断続性呼吸副雑音にはクラックルcracklesがある。 細かい高調性のソフトなクラックル音を捻髪音、粗い低調性で大きなクラックル音を水泡音と呼ぶ。 クラックルはまた、下表のように聴かれるフェーズで分類され、病態を反映している。 表:フェーズによるクラックルの分類 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 吸気早期クラックル early inspiratory crackles:慢性気管支炎 吸気早中期クラックル early-to-mid inspiratory crackles:気管支拡張症 吸気終末期クラックル late inspiratory crackles:間質性肺疾患・非定型肺炎 吸気全般期クラックルholo (pan)-inspiratory c
バイアスの影響で、本来やるべきwork-upを途中で止めてしまうことを「premature Closure」と言います。
健康と平和について発信する英語版ブログをスタートしました。「Wellness and Peace and Okinawa」 長寿研究で有名なDavid Itokazu先生との共同作業ブログです。 好評のメルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」の最新内容を厳選編集した本の最新版「知っておくと役に立つ最新医学2018」が出ました。一般の方々の役に立つ最新医学知識を満載。グローバル・スケールでの先端医学のホットな話題もわかりやすく解説。特徴はテレビや新聞より早いグローバルな情報、科学的に正確なエビデンスに基づく情報です。 徳田安春、荘子万能の「徳田闘魂道場へようこそ」こちらポッドキャストにて配信中、是非お聴き下さい。 科学的根拠に基づく最新医学情報とグローバル・スケールでの先端医学のホットな話題を提供し、わかりやすく解説します。メルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」。2017年のメルマガま
待望の新刊が発売中!「病歴と身体所見の診断学:検査無しでここまでわかる」こちらもお試しください。必ずやためになることでしょう。 好評のメルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」の最新内容を厳選編集した本の最新版「知っておくと役に立つ最新医学2018」が出ました。一般の方々の役に立つ最新医学知識を満載。グローバル・スケールでの先端医学のホットな話題もわかりやすく解説。特徴はテレビや新聞より早いグローバルな情報、科学的に正確なエビデンスに基づく情報です。 徳田安春、荘子万能の「徳田闘魂道場へようこそ」こちらポッドキャストにて配信中、是非お聴き下さい。 科学的根拠に基づく最新医学情報とグローバル・スケールでの先端医学のホットな話題を提供し、わかりやすく解説します。メルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」。2017年のメルマガまぐまぐ大賞「健康」部門第4位に選ばれました。 臨床推論の総論とピット
患者のベッドが体の激しい震えによって「ガタガタ」揺れている場合や寒さで歯をガチガチ鳴らしているときは、悪寒戦慄shaking chills (shivering)を意味しており、ただちにsepsis workupを行うとよいでしょう(表)。
待望のシリーズ第三弾!テレビや新聞より早いグローバルな情報や科学的に正確なエビデンスに基づき、サプリなどの宣伝なしの信頼性の高い中立な情報をお届けします。キンドル版「知っておくと役に立つ最新医学2017(ノンフィクション)」こちらいかがでしょうか。 科学的根拠に基づく最新医学情報とグローバル・スケールでの先端医学のホットな話題を提供し、わかりやすく解説します。メルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」。2016年のメルマガまぐまぐ大賞「健康」部門5位に選ばれました。 「こんなとき フィジカル1と2」立ち読みできます。是非どうぞ。 徳田安春、荘子万能の「徳田闘魂道場へようこそ」こちらポッドキャストにて配信中、是非お聴き下さい。 臨床推論の総論とピットフォールをマンガでサクッと1時間以内に習得できます。エキスパート診断医への一歩を踏み出すことができます。「マンガ臨床推論~めざせスーパージェネラ
糖尿病は免疫低下状態なのだから、細菌感染症疑いの初期抗菌薬選択では広域スペクトラムな抗菌薬を選択した方がよいのか?という質問をよく受けます。 確かに糖尿病のコントロールが悪いと細胞性免疫の低下状態になる。 下記のようなネモニクス(記憶法)もあります。 LLMNSS Listeria Legionella Mycobacterium Nocardia Salmonella Staphylococcus しかしながら、抗菌薬の選択については通常の感染症と同じように、どこの臓器に感染が起こっているか追求してできるだけ検体を採取したうえでグラム染色の結果から原因菌に合わせて適切に選択するのがよいと思います。 もちろん、培養結果にフォローして、できるだけ、antimicrobial stewardship に勤めましょう。 待望のシリーズ第三弾!テレビや新聞より早いグローバルな情報や科学的に正確なエ
自分の脳が最高レベルで機能できるような環境と時間設定が重要である。 とくに雑音を避けることは必須。 次のような状況では、生産的な高度知的作業は困難だろう。 ●大量飲酒後 ●睡眠不足 ●仕事後での夜遅くの作業などで脳が疲れた状態 ●ノイズが多い環境(電話がガンガン鳴り、周りのおしゃべりが多い相部屋) ●集中力を妨害するような音楽(ハードロックやヘビーメタルなど) 「こんなとき フィジカル1と2」立ち読みできます。是非どうぞ。 徳田安春、荘子万能の「徳田闘魂道場へようこそ」こちらポッドキャストにて配信中、是非お聴き下さい。 待望のシリーズ第三弾!テレビや新聞より早いグローバルな情報や科学的に正確なエビデンスに基づき、サプリなどの宣伝なしの信頼性の高い中立な情報をお届けします。キンドル版「知っておくと役に立つ最新医学2017(ノンフィクション)」こちらいかがでしょうか。 科学的根拠に基づく最新医
Abstract ケースレポートのAbstractは通常、1パラグラフです。 ケースレポートの全体には、それぞれintroduction、case description、discussionがありますね。 これらのそれぞれのパートを要約して書けばよいのです。 以下は追加の助言です ①よい英語は不可欠ですが、文学的表現は不要です。 それほど難しい英語は要りません。 最近はたいてい周辺にnative speakerがいますので、nativeを仲間に入れるのもよいでしょう。 ②Teaching pointを明確にすることが重要です。 ③専門用語は必要ですが、あまりにもテクニカルなことばや基礎医学的な用語や最先端の難解用語は避けましょう。 一般医師読書向けの妥当な用語を使いましょう。 ④診断に関しては確診ケースが望まれます。 診断確定していないケースは報告困難です。 ⑤投稿する前に仲間、特に共著
########コラム######## 「膠質浸透圧低下型の浮腫」かの鑑別には、pit recovery timeの測定が有用。 浮腫をきたしている部分を指2~3本で1~2センチの深さでpitさせ、pit部位が元に戻るまでの時間を計測する。 pit recovery timeが40秒未満のfast edemaは膠質浸透圧低下型の浮腫であることが多い。 一方、40秒以上のslow edemaは、心不全などの静脈圧上昇を伴う浮腫であることが多い。 ################### まとめ:浮腫の診療ルール 1.両側性浮腫なのか片側性なのかを判別する。 2.片側性浮腫においてはまずDVTの有無を早急に評価する。 3. 両側性浮腫では詳細な薬剤歴をチェックする。 4.Pitting edema ではpit recovery timeの測定が有用。 この回で浮腫の診療シリーズは終了です。
推奨する基本治療「OK」と「NG」 2 R3:次に、別の症例について相談したいと思います。 *************************** 症例2:52歳女性、高血圧症と更年期症候群にて近医フォロー中の患者。 7日前から両下肢の腫脹を認めたため受診。 発熱、悪寒、疼痛、胸痛、呼吸苦、動悸、なし。 最近、血圧のコントロールが不良となっていた。 来院時バイタルサインで血圧170/90 mmHg、その他正常範囲内。 身体所見上は両下肢脛骨前面の浮腫を認める。 採血検査で血清カリウム値が3.5 mEq/Lと低値以外に異常なし。 浮腫+低K血症に対して、スピロノラクトン(商品名アルダクトン) 25 mg分1を開始して2週間後にフォローとしました。 *************************** S:これは「NG」と思いますね。 浮腫をみると反射的に利尿剤を処方する研修医がいますが、そ
S:それでは次に、全身性浮腫の原因についてまとめてみましょう。 全身性浮腫の原因→下表 表:両側性浮腫の鑑別診断 (1)静脈圧の上昇 ①慢性静脈不全:軽度浮腫の最も多い原因 ②容量過多:腎不全、肝不全、過剰輸液 ③右心圧の上昇:心不全、肺性心、右心系弁膜症 ④静脈(またはリンパ管)閉塞:腫瘍(卵巣、子宮、膀胱、前立腺)、後腹膜線維症、 リンパ節腫脹 (2)膠質浸透圧の低下:ネフローゼ症候群、肝硬変、タンパク質およびカロリー欠乏性栄養、蛋白漏出性腸症 (3)血管浮腫:遺伝性、後天性、薬剤性(ACE阻害剤、NSAID、モルヒネ、造影剤) (4)薬剤:カルシウム拮抗剤、ステロイド、性ホルモン、NSAID、COX2阻害剤、他の降圧剤 (5)粘液水腫:パセドウ氏病、重度甲状腺機能低下症 (6)脂肪浮腫 lipedema (7)リンパ浮腫:リンパ管平滑筋腫症 (8)Capillary leak syn
S:それではまず、局所性浮腫の原因についてまとめてみましょう。 局所性浮腫の原因 (1)深部静脈血栓症 (2)閉塞性・炎症性リンパ浮腫:感染症(フィラリア、結核、再発性リンパ管炎)、術後、外傷後、放射線性、サルコイドーシス (3)原発性リンパ浮腫:遺伝性リンパ浮腫(生下時;Milroy型、思春期から30歳までの女性;lymphedema precox、35歳以降;lymphedema tarda) (4)大静脈以下のレベルでの閉塞:腫瘍、リンパ節腫脹 (5)局所外傷:Baker 嚢胞破裂、ヒ腹筋断裂 (6)炎症:蜂窩織炎、悪性腫瘍に伴う炎症、表在性血栓性静脈炎 (7)反射性交感神経性異栄養症 (8)血管浮腫 (9)先天性(まれ):Klippel - Trenaunay(ポートワイン班、四肢肥大、片側性静脈瘤を伴う静脈奇形)、Parke - Weber (聴診でbruitが聴取される動静脈奇
皆様こんにちは。前回に引き続き、浮腫について考えていきましょう。 R:ただ、顔面に出るタイプもありますね。 S:するどい指摘だね。 血管透過性の亢進を伴う病態では、重力に関係しないんだよ。 アナフィラキシー反応などでは、口唇や顔面全体に急速に出現する腫脹として現れるよね。 R:なるほど。 浮腫患者の診察で最初にチェックすべきポイントは何ですか? S:浮腫の鑑別ではまず、両側性浮腫なのか片側性浮腫かを見分ける。 下肢であれば、浮腫が両下肢なのか片側下肢なのかをみる。 上肢であれば、浮腫が両上肢なのか片側上肢なのかをみる。 顔面や口唇に出現した浮腫では、両側性浮腫として扱う。 R:なぜ、両側性と片側性を見分けるのが重要なのですか? S:一般的に、両側性浮腫は全身疾患によることが多く、片側性浮腫は局所の病変によることが多い。 もちろん、このルールにも例外はあります。 たとえば、下大静脈分岐部より
浮腫の診療について指導医とレジデントとの対話 登場人物 S:指導医 R~R4:4人のレジデント 1)ポイント S:浮腫は様々な臓器に関連する鑑別診断を必要とする病態ですので、総合医にとって非常に重要な症状です。 ところで、症候学の第一歩は症候の定義から始まります。 浮腫の定義は何ですか? R:「からだのむくみ」ではだめですか? S:より正確には、浮腫とは3rdスペースへの水分貯留をいう。 ・・・・・・・・・・・・・・Key Words・・・・・・・・・・・・・・ 3rdスペース 体内で水分が存在できるスペースには、細胞内スペース(1stスペース)と細胞外スペースがある。 そして、細胞外液スペースは、「血管内スペース(2ndスペース)」と「細胞外かつ血管外スペース(3rdスペース)」がある。 3rdスペースには組織間質以外に、胸腔内や腹腔内も含まれる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
皆様こんにちは。 今回で倦怠感の鑑別は最後です。ではどうぞ。 SIGE CAPS(長嶋茂雄の帽子)という語呂合わせ記憶法もある(下表)。 表:SIGE CAPS ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ S: sleep disturbance I: interest loss G: guilty E: energy loss C: concentration loss A: appetite loss P: psychomotor slow S: suicide ideation ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ メッセージ l 倦怠感はLow yield symptomであり、病歴でHigh yield symptomを探す。 l 通常の病歴聴取で不明なときはROSを実施する。 l 急性の倦怠感では「5大疾患カテゴ
皆様こんにちは。 前回に引き続き、倦怠感の鑑別を考えていきましょう。 では、下表に慢性臓器不全に認められる病歴と身体所見を示す。 表:慢性臓器不全の急性憎悪の主要な徴候 慢性心不全 発作性夜間呼吸困難、起坐呼吸、S3ギャロップ、静脈圧上昇、クラックル 慢性呼吸不全 痰増加、痰黄色化、呼吸困難の憎悪、喘鳴、アステリキシス、意識障害 慢性腎不全 尿量低下、食欲低下、悪心、嘔吐、呼吸尿臭、アステリキシス、意識障害 慢性肝硬変 黄疸、呼気腐敗臭(肝性口臭:fetor hepaticus)、アステリキシス、意識障害 慢性の倦怠感の鑑別 1か月以上続くような慢性の倦怠感では下表のような疾患カテゴリーを考える。 表:慢性疾患(週から月単位の経過)で倦怠感をきたすもの 悪性腫瘍 結核 膠原病(血管炎を含む) 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、糖尿病、副腎機能低下、Cushing 症候群
急性倦怠感の鑑別 急性倦怠感の患者診療のときには、下表に示す「5大疾患カテゴリー」に注意する。 表:急性発症の全身倦怠感をきたすcritical な疾患 急性冠症候群 感染症 脱水 電解質異常 慢性臓器不全の急性憎悪 高齢者や糖尿病患者では胸痛の無い、「原因不明の倦怠感」が主訴の急性冠症候群で受診する患者がいるので、そのような患者で「原因不明の倦怠感」では心電図をとるようにする。 また、高齢者(特に施設入所高齢者)では、「感染症疑い」患者であってもROSで病変臓器を絞ることができないことがしばしばある。 その場合、頻度の多い臓器を考えてワークアップを行う。(下表)。 表:施設入所高齢者に頻度の多い感染症(頻度順) 1.気道感染(気管支炎、肺炎、膿胸、肺膿瘍、肺結核) 2.尿路感染症 3.胆道感染症(胆嚢炎、胆管炎) 4.軟部組織感染症(蜂窩織炎、丹毒、その他) 脱水の身体所見の特異度は高い
倦怠感のメカニズム 倦怠感がおこるメカニズムについて最近、免疫系の刺激が関与していることが分かった。 炎症や感染などで、血中のサイトカインが過剰に上昇すると大脳半球に作用し、倦怠感をきたす。 ラットなどによる実験では、サイトカインを注射すると、これまで元気に動き回っていたラットがじっとして動かなくなり、ラットに倦怠感を思わせるような行動がみられるという。 これを急性病的行動acute sickness behaviorとよぶ。 同時に、ラットにも食欲低下がみられるので、倦怠感+食欲低下では、このacute sickness behaviorとしてとらえて重篤な疾患の可能性を考える。
慢性閉塞性肺疾患 部位別の診察では、胸鎖乳突筋発達と気管短縮、樽状胸郭があった。 これらの所見がある場合は、慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease (COPD)を考える。 喫煙歴で80歳まで2箱吸っており、20歳から吸っていたとすると120pack-Yearとなる。 一般的に40 Pack-year以上では慢性閉塞性肺疾患のリスクが高い。 以上より、本症例はCOPDに罹患していると考えたほうがよい(ガイドラインでは肺機能検査が必須なので、確定のためには安定期になってから検査を行えばよい)。 細菌性肺炎 右背下部で聴取されるcoarse crackles (holo-inspiratory crackles)は、細菌性肺炎を示唆する。 これで病歴で疑われた呼吸器系の感染症の可能性が高いこととなった。 次に行うのは、肺炎を確認する検査(胸部単
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体所見: 全身の外観:病的 moderately-ill 頸部:胸鎖乳突筋発達あり。気管短縮あり。 胸部:樽状胸郭あり。 肺:右背下部にcoarse crackles (holo-inspiratory crackles)あり。 その他に異常を認めず。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 全身の外観 最新の進化心理学によると、人間にはもともと知覚する対象を「全体」でとらえる能力が進化の過程で習得したとされる。 これをゲシュタルト心理学ともいう。 このような能力を有効活用すべきである。 すなわち、診察の際にはまず、全身の外観general appearanceを数秒で把握して記載するように努める。 少なくともgood vs sickは判断してほしいが、下表の4段階の記載ができればなおよい。
感染症と敗血症 前回からの続きのケースでは、咳と痰が数日で出現しているので、急性の湿性咳嗽である。 病態としてはまずInfectionを疑う。 呼吸器系では肺炎や気管支炎などが代表的なInfectionである。 Infectionを疑うとき、バイタルサインの異常がないかどうかは重要である。 異常があれば敗血症を示唆する。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ バイタルサイン: T 36.9度 BP 130/80 mmHg PR 91 /分RR 23/分 SpO2 94%(室内気)GCS13 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ バイタルサインの解釈 体温は一見すると正常にみえる。 しかしながら、高齢者ではベースの体温の個人差が大きく、ベースが35度台の患者がいる。 そのような患者の体温が36台後半の場合には、発熱があるととらえ
病態生理で考える 呼吸器系のROSが陽性である。 呼吸器系の疾患があることを考える。 病変臓器を想定できたら次に病態生理を考える。 病態生理のごろ合わせとして有名なものにVINDICATE-Pがある。 下表に示す。 表:病態生理の分類:VINDICATE-P ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ Vascular Infection/inflammation Neoplastic Degenerative/mechanical Iatrogenic Congenital Autoimmune Traumatic Endocrine/Electrolyte/metabolic Psychiatric/Psychogenic/Pregnancy ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
#システムレビュー high-yield symptomが得られなければシステムレビューReview of Systems (ROS)を行えばよい。 ROSを自分自身で作成してチェックリストとして携帯するか電子カルテに保存しておくとよい。 high-yield symptomをみつけないと全身のショットガン的な検査を行うことになってしまう。 ROSのサンプルを下表に示す。 表:システムレビューReview of Systems (ROS)の例 (これらについて適宜問診を行う) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 全身:発熱、悪寒戦慄、体重減少、寝汗 心血管系:胸痛、背部痛、失神、動悸 呼吸器系:呼吸困難、咳、痰 消化器系:悪心、嘔吐、嚥下困難、下痢、腹痛、吐血、下血、タール便 腎泌尿器系:頻尿、残尿感、排尿時痛、肉眼血尿、膿尿、失禁 代謝内分泌系:多尿、多飲
それでは症例をみてみよう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 症例 85歳 男性 脳梗塞、認知症で施設入所中 昨日より倦怠感あり。 食欲低下もあり。 施設の職員により初診外来受診となる。 既往歴:高血圧、認知症 内服薬:ディオバン1日40mg 生活歴:飲酒なし。喫煙80歳まで2箱。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ #low-yield symptomを訴える患者へのアプローチ 倦怠感に加えて、食欲不振も同様にlow-yield symptomである。 low-yield symptomを訴える患者へのアプローチは、特異的な随伴症状を探すことからスタートする。 特異性の高い症状はhigh-yield symptomと呼ばれる。 開放型質問による病歴聴取でhigh-yield symptomが自然に得られることが多いので、注意して病歴を取る
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『燃えるフィジカルアセスメント』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く