日本の制度改革でもっともむずかしい(そのために取り残されている)のが、雇用規制の改革だ。特に長期雇用は、企業や労働者にとって個別には合理的であるため、それを改めるインセンティブがない。労働者にとっては、いつクビになるかわからない雇用契約より終身雇用のほうがいいに決まっているので、彼らが長期雇用を望むのは当たり前だ。他方、企業も他社が長期雇用で採用しているとき、自社だけ有期雇用で募集してもいい人材は来ない。 だから労働者は転職を考えないで社内の出世競争に特化し、企業も正社員を解雇しないで新卒の採用を抑制し、非正社員に置き換える。こうした労働市場の二重化によって賃金に格差が生じ、平均賃金は競争的な水準より高くなって過少雇用が起こるというのが効率賃金仮説である。個別には合理的な行動の集計が社会的に非効率的な結果をまねく原因は、各個人や企業の行動が他の経済主体に影響を及ぼす外部性があるからだ。つ