日本近現代史を専門とする米コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)。『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義―学生との対話―』(講談社現代新書)には、グラック教授がコロンビア大学で多様な学生たちと「戦争の記憶」について対話した全4回の講義と、書きおろしコラムを収録している。 同書に3回目の講義として収録されている「慰安婦の記憶」を掲載。第2回目となる今回は、「慰安婦問題」がなぜ最初は語られなかったのか、そして語られるようになったのはなぜなのか、その背景に学生たちが迫った。 戦後長らく、慰安婦問題が語られなかった理由 ディラン 前回の講義で話されたように、アメリカと日本の戦争の物語は基本的にはパールハーバーから始まって原爆で終わります。そのような主要な物語があると、中国や韓国といった東アジア側の物語は丸ごと語られなくなってしまうのかもしれません。 グラック教授 それも一つの理由ですね。慰