ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (26)

  • 「正常な忘却」は決して悪いことではない──『忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか』 - 基本読書

    忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか 作者:スコット・A・スモール白揚社Amazon的に記憶力が良いことはこの社会を生き延びていくにあたって「良い」ことだとされている。記憶力を高めたいと思わない人がいるだろうか? 認知症でもないのに忘れっぽかったり覚えが悪かったりすると、心配されることもあるだろう。しかし、「忘却する」ことは脳にあらかじめ用意されている、とても有益な機能でもある。 書『忘却の効用』はコロンビア大学の神経精神科学教授であるスコット・モールが、忘却の利点について解説した一冊だ。記憶力が良い人、何もかも忘れない人(時折、そういう人がいるのだ)にも良い点はあるが、そうであるがゆえのデメリットも存在する。僕も人に呆れられるほど忘れっぽい方で、もう少し記憶力がよければなあと思う局面も多い(たとえばトークイベントで昔読んだの話をしようとしても全然内容を思い出せないと

    「正常な忘却」は決して悪いことではない──『忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか』 - 基本読書
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    filinion 2024/05/08
    何ヶ月も何年も前の嫌な記憶が突然フラッシュバックしてキレるの、発達障害の子ではよく聞く話ですね…。あれも「適度に忘れる」ことが苦手だからなのかも知れない…。
  • アンチ優生学の立場で、遺伝がもたらす人生への影響を「平等」の観点から考え直す──『遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―』 - 基本読書

    遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる― 作者:キャスリン・ペイジ・ハーデン新潮社Amazon近年、遺伝子研究が進展してきたことで身長や顔といった見た目の要素だけでなく、「学歴」のような生涯収入やそれに伴う生活の質に直結する部分も遺伝子の影響を受けることがわかってきた。しかしそうしたデータは気軽に世に出すと、何度否定されても議論が絶えることのない優生学や、何をもってして社会は「平等」や「公平」といえる状態になるかといった、簡単には答えのでない議論を呼び込むことになる。 しかし、実際に遺伝子によって学習能力や最終学歴に差が出るのであれば、議論が難しいからとか、遺伝による差が明らかになると優生学に結びつく可能性があるからと危惧し「遺伝的な差異をなかった/見なかった」ことにするのは間違っているのではないか。それ──遺伝的な差異による富の格差──がある前提で、平等についての議論を進める必要があるの

    アンチ優生学の立場で、遺伝がもたらす人生への影響を「平等」の観点から考え直す──『遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―』 - 基本読書
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    filinion 2023/10/26
  • AIによる「自動化」の背後に隠れて生み出された、大量の人間を必要とする仕事について──『ゴースト・ワーク』 - 基本読書

    ゴースト・ワーク 作者:メアリー・L・グレイ,シッダールタ・スリ晶文社Amazon『ゴースト・ワーク』とまるでホラー小説のような書名だが、ノンフィクションである。「ゴースト・ワーク」とは書の造語で、人工知能やウェブサイトの動作を支えている、見えづらい(あるいは、意図的に隠されている)裏側の人間の労働のことを指している。わかりやすい例でいえば、人工知能のモデルに学習をさせるために、の画像にのラベルを貼りつける、あるいはフェイスブックやインスタグラムやツイッターのようなSNSで、暴力的なコンテンツとAIが自動で判定したコンテンツが、当にまずいものなのか、誤判定されたものなのかをチェックする仕事である。 GPT-3〜4の登場もあってAIの発展著しい昨今、AIは多くの人間の仕事が奪われると恐怖と共に語られることが多いが、まだまだ完全に人間の仕事を置き換えることは難しい。それは逆にいえば、「

    AIによる「自動化」の背後に隠れて生み出された、大量の人間を必要とする仕事について──『ゴースト・ワーク』 - 基本読書
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    filinion 2023/07/10
    「AIが進歩しても仕事を奪われる心配はない! 新しい仕事が生まれるから大丈夫!」みたいなことを言う人たちがいたが、その「新しい仕事」ってこういうのなのかな…。
  • インカ帝国「が」スペインを侵略した架空の歴史を描く、読む『シヴィライゼーション』とでも言うべき改変歴史長篇──『文明交錯』 - 基本読書

    文明交錯 (海外文学セレクション) 作者:ローラン・ビネ東京創元社Amazonこの『文明交錯』は、スペインがインカ帝国を征服した史実を反転させ、逆にインカ帝国がスペインを征服していたら世界はどう変わっていったのかを描き出す歴史改変長篇だ。著者は『HHhH――1942年』などで知られるローラン・ビネ。 『HHhH』はメタ歴史小説とでもいうべき傑作で、作もその設定のキャッチーさからかなり期待して読み始めたが、期待以上のおもしろさだ。普通に考えたら資源にも装備にも劣るインカ帝国がスペインを征服できるはずはないのだが、何が起こったらそれが起こり得るのか? を追求していく手付きはまるでノンフィクションを読んでいるかのよう。そして、征服の過程、また征服を終えた後、反乱を抑え周辺諸国と渡り合っていくために内政をいちから整えていく様はまるでゲーム『シヴィライゼーション』をプレイしているかのようなスピード

    インカ帝国「が」スペインを侵略した架空の歴史を描く、読む『シヴィライゼーション』とでも言うべき改変歴史長篇──『文明交錯』 - 基本読書
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    filinion 2023/04/16
    「Civilization」を始め、欧米の描くアステカが「好戦的で生贄の儀式を行う異教の野蛮人」扱いなの、「だから滅ぼされても仕方ないよね」という白人クリスチャン側の自己正当化だと思う。野蛮な侵略者はどっちだという。
  • 物理術師から幻術師まで、大きく異る方向の天才魔法使いが6人集められ、最終的に排除する1人を決める、ファンタジー×SF長篇──『アトラス6』 - 基本読書

    アトラス6 上 (ハヤカワ文庫FT) 作者:オリヴィー ブレイク早川書房Amazonこの『アトラス6』は著者オリヴィー・ブレイクがロースクール在学中にセルフパブリッシングで刊行したのち、爆発的に人気が出てAmazonPrimeでのドラマ化も決定している話題のファンタジー長篇だ。記事名にも入れたが、他者の行動に関与するエンパスに他者の思考を読み取るテレパス、世界の物理的事象に干渉する物理術師など様々な「特殊な力」を行使する、凄腕魔法使いたちの物語となる。 世界中の貴重な蔵書を守護する秘密の組織〈アレクサンドリアン協会〉、そこでは10年に1度、6人の在野の魔法使いらが選出され、うち5人だけが入会を果たし、富や名声、協会しか持っていない資料へのアクセスが許される──。と、魅力的な冒頭のあらすじに加えて表紙イラスト&装丁が最高だったので期待して読み始めたのだけど、中身はその上がりきったハードルにち

    物理術師から幻術師まで、大きく異る方向の天才魔法使いが6人集められ、最終的に排除する1人を決める、ファンタジー×SF長篇──『アトラス6』 - 基本読書
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    filinion 2023/03/27
  • 運動不足な読書家、ゲーマーはエアロバイクを漕ぐべし - 基本読書

    アルインコ(ALINCO) フィットネスバイク AF6200 見やすい大型液晶メーター エアロマグネティック 8段階負荷調節 テレビで紹介された 静音 サドル調整 組立簡単 心拍測定 簡単移動 タブレットトレー アルインコ(Alinco)Amazon今年買ってよかったもの記事でも書こうかなあと思ったのだけど、自分の場合これは一択(エアロバイク)しか存在しなかったので、むしろエアロバイク普及記事を書こうと突如思い至った。とにかくこれはよかったので、今更感もあるが、運動できない/したいと悩んでいる人、特に読書家やゲーマーにオススメしたい。何しろ、これなら運動しながら読書ができるし、ゲームだって(対戦系ゲームは難しいが)できるし無論のことゲーム配信や映画やドラマを見ることだってできるのである。 なぜ運動しようと思い立ったのか そもそもなぜ運動しようと思い立ったのか。その流れを最初に書いておくと、

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    filinion 2022/12/15
    アルインコのエアロバイクミニ(ハンドルと座席がない。ペダルだけ)をパソコンデスクの下に置いたら、PCで動画見ながら漕げるようになった。運動負荷は普通のより小さい。
  • ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』 - 基本読書

    平和という名の廃墟 上 帝国という名の記憶 (ハヤカワ文庫SF) 作者:アーカディ マーティーン早川書房Amazonこの『平和という名の廃墟』は、前作『帝国という名の記憶』で長篇デビュー作ながらもヒューゴー賞を受賞したアーカディ・マーティンの第二作にして二部作の後篇となる。前作は書名に「帝国」と入っているように、宇宙をまたにかける銀河帝国と、その宮廷で繰り広げられる皇帝の跡継ぎ問題なども関わってくる陰謀劇を中心に描き出す、いわばスペース・ポリティカル・サスペンスとでもいう作品であった。 著者は大学でビザンツ帝国史の博士号を取得し、別の大学で都市計画の修士をとるなど専門的背景のある人物だが、まさにそうした専門性や知識を活かして、前作では宇宙帝国とその在り様を生き生きと、美しく描き出していた。宇宙帝国ならではの特殊な文化・概念の書き込み、帝国とそれが実質的に植民地支配した周辺諸国との微妙な力関

    ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』 - 基本読書
  • リバタリアンが集まる町を作ったら、そこは熊の巣窟になった──『リバタリアンが社会実験してみた町の話:自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』 - 基本読書

    リバタリアンが社会実験してみた町の話:自由至上主義者のユートピアは実現できたのか 作者:マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング原書房Amazon はじめに どのように人々は集まってきたのか? 自由な町にヤバいやつらが集まってくる。 リバタリアンらは町を良い方向に変えたのか? おわりに はじめに 他者の身体や私的財産を侵害しない限り、各人が望むすべての行動は自由であると主張する、リバタリアンと呼ばれる人たちがいる。すべてを自由にすべきと考える原理的な人から、条件的に制約を認める人まで無数の思想的内実があるわけだが、そうした思想を持つ人々にとっては多くの国家・地域は制約だらけにみえるだろう。 自分たちの思想を社会に反映させるためには、民主主義の場合にはリバタリアン的思想を持つ候補者に票を投じたり、自分自身が立候補して国の方針を地道に変えていかなければいけないわけだが、それは当然ながらなかなかに大変な

    リバタリアンが集まる町を作ったら、そこは熊の巣窟になった──『リバタリアンが社会実験してみた町の話:自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』 - 基本読書
  • 弾圧が行われているとされる新疆ウイグル自治区で、実際に何が行われているのか?──『AI監獄ウイグル』 - 基本読書

    AI監獄ウイグル 作者:ジェフリー・ケイン新潮社Amazonこの『AI監獄ウイグル』は、近年弾圧が激しくなっているとされるウイグルで、実際に何が行われているのか、150人以上のウイグル人の難民、技術労働者、政府関係者、元中国人スパイにインタビュー取材をしその結果をまとめた一冊になっている。 書で描き出されているのは、チャットアプリによるメッセージや電話がすべて監視され、家の前には個人情報が詰まったQRコードが貼られ、身体情報から移動履歴などすべてのデータを元に犯罪を起こす可能性のある人物をAIが自動的にピックアップする「デジタルの牢獄化」したウイグルの姿である。これまで、断片的なニュース情報を読むことでウイグルで相当なことが行われていることはわかっていたつもりだったが、実際に収容所などを体験した人物のレポートはあまりにも衝撃的だ。 読み終えた夜は、自分が強制収容所に入っている悪夢を見たぐ

    弾圧が行われているとされる新疆ウイグル自治区で、実際に何が行われているのか?──『AI監獄ウイグル』 - 基本読書
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    filinion 2022/01/23
  • 第一次世界大戦中にインターネットや携帯電話が発展し、高度な監視システムが構築されたIFのドイツを描き出す改変歴史SF──『NSA』 - 基本読書

    NSA 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:アンドレアス エシュバッハ早川書房Amazonこの『NSA』は、ドイツを代表するSF作家アンドレアス・エシュバッハが18年に発表した、ドイツが舞台の歴史改変SF小説である。歴史改変ものとは、「もし歴史のあの時点で結果がこうなっていたら?」といった実際の歴史と異なる仮定をおき、別の歴史を空想するジャンルのことだが、その舞台とされる歴史の分岐点にも人気の多寡がある。もっとも書かれてきたのは、おそらく第二次世界大戦時の話だろう。 たとえば、第二次世界大戦でもし大日帝国、ドイツ、イタリアの枢軸国側が勝利したら……? は『高い城の男』や『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』など多くのSF作品で描き出されてきた。で、『NSA』も改変歴史SFで、大人気の第二次世界大戦期のドイツが舞台なのだが、題材的には先行作と比べても変わり種だ*1。 『NSA』が描き出して

    第一次世界大戦中にインターネットや携帯電話が発展し、高度な監視システムが構築されたIFのドイツを描き出す改変歴史SF──『NSA』 - 基本読書
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    filinion 2022/01/16
  • 2020年の読むべき日本SF短篇が一冊であらかたカバーできる、竹書房文庫の年刊日本SF傑作選!──『ベストSF2021』 - 基本読書

    ベストSF2021 (竹書房文庫, お6-2) (竹書房文庫 お 6-2) 作者:大森 望竹書房Amazon2020年に発表された日SF短篇の中から、大森望が傑作をよりすぐったのがこの竹書房から刊行されたアンソロジー『ベストSF2021』である。2019年作品版の『ベストSF2020』が2020年の7月頃に出ていたことを考えると、21年の年末ぎりぎりに刊行されたこの『ベストSF2021』は書名も相まって21年の傑作が集められているように錯覚してしまうが、最初に書いたように発表年はすべて2020年のものなので注意。 20年は日SF、特に短篇が読めていなかったのではじめて読んだ作品が多かったという個人的事情もあるけれども、今回の『ベストSF2021』は、作品内容も僕の好みド真ん中をついてくるものが多くて、前年のアンソロジーと比べても高い満足感を与えてくれた。総作品数は11作家11作品、ペー

    2020年の読むべき日本SF短篇が一冊であらかたカバーできる、竹書房文庫の年刊日本SF傑作選!──『ベストSF2021』 - 基本読書
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    filinion 2022/01/01
  • 謎の信号によって人類のDNAがハッキングされ、「終局」に至る様をノンフィクションとして描き出す、ファーストコンタクトSF──『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』 - 基本読書

    ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日 (竹書房文庫) 作者:キース・トーマス竹書房Amazonこの『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変』は、2023年に銀河系のはるか彼方から届いたパルスが人類にぶちあたり、そこから一部の人々が重力波を見ることができるようになったり、知的能力が向上したりといった、一種のアップデート、進化(誤用)が行われてしまった世界について描かれたファーストコンタクトSFである。 特徴的なのは、作はそうした状況を誰かの目を通してリアルタイムで体験していくのではなく、2023年からはじまった一連の騒動が終わり、「終局」を迎えたあとの2028年に刊行されたノンフィクションという体裁で進行していくところにある。このノンフィクションは、元大統領からジャーナリスト、研究者まで様々な立場の人間の証言を元に構成されていて、読み進めていくうちに、「終局」とは何を

    謎の信号によって人類のDNAがハッキングされ、「終局」に至る様をノンフィクションとして描き出す、ファーストコンタクトSF──『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』 - 基本読書
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    filinion 2021/11/09
  • 世界2900万部超えの怪物中国SF三部作、ついに完結──『三体』 - 基本読書

    三体Ⅲ 死神永生 上 作者:劉 慈欣早川書房AmazonSFとしてはこの10年で最大の話題作である、作家劉慈欣による『三体』。その三部作が、先日刊行されたばかりの『三体III 死神永生』(ししんえいせい)でついに完結! 中国国で大いに盛り上がり、その後ケン・リュウによる英訳で米国を中心とした英語圏で大ヒット。日でも第一部が刊行されるや否や話題に火がつき、SFとしてはありえないような話題と部数が出た──と、国内外問わずその部数だけみても化け物級の力を持った作品だが、重要なのは部数より作品のおもしろさ、それ自体である。 寂寥感を覚えるほどの傑作 どれだけ部数を重ねようがおもしろさはどうだろうかという作品もあるわけで、作はどうなのよという話になってくるわけだけれども、これについてはもう何の疑いもなく、傑作であると断言することができる。それも、人生にそう何冊も訪れることのない、記念碑的な傑作

    世界2900万部超えの怪物中国SF三部作、ついに完結──『三体』 - 基本読書
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    filinion 2021/06/02
    評判を聞いて一部を読んだのだけどよくわからなかった。何百年か先に人類存亡の危機が! …と言われても、三体人が来る前に温暖化とか核戦争とかで人類が滅びる方が心配なんじゃないかと思ってしまって…。
  • なぜ、無意味な仕事ばかり増えているのか?──『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』 - 基本読書

    ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論 作者:デヴィッド・グレーバー発売日: 2020/07/30メディア: 単行この『ブルシット・ジョブ』は、文化人類学者であるデヴィッド・グレーバーによる「クソどうでもいい仕事」についての理論である。「クソどうでもいい仕事」とはなにかといえば、文字通りとしかいいようがないのだけれども、「その仕事に従事している人がいなくなっても誰も何も困らないような無意味な仕事」のことである。 原書で刊行された時から日でも大変に話題になっていた一冊で、楽しみに読み始めたのだけど、これがとにかくおもしろい! 確かに世の中にはブルシット・ジョブとしか言いようがないくだらない仕事が溢れているように見える。それがどれほどありふれているのか、またどのようなタイプのブルシット・ジョブが存在するのか。また、仮にこれが近年さらに増大を続けているとしたら、それはなぜなのか。そ

    なぜ、無意味な仕事ばかり増えているのか?──『ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論』 - 基本読書
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    filinion 2020/08/10
    「自分の仕事を疑うのはよしたまえ。たとえどんなに意味不明で甲斐のない仕事に見えても、実際にその通りだという事実に直面するよりはましだ」(霧間誠一。「ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター」より)
  • BIを導入したら本当に人は働かなくなるのか?──『みんなにお金を配ったら──ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?』 - 基本読書

    みんなにお金を配ったらー―ベーシックインカムは世界でどう議論されているか? 作者: アニー・ローリー,上原裕美子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/10/11メディア: 単行この商品を含むブログを見るベーシックインカムという、最低限所得保障の考え方がこの世に存在する。簡単に説明すれば、一月3万なり10万なりを、制限をつけず全国民に配布しちゃいましょう、という考え方である。「え、毎月10万貰えたらメッチャ嬉しい、やったー!」と気分が沸いてくるが、実際には利点に関しても欠点に関しても様々な議論がある。 BIの想定される利点と欠点 たとえば、そもそも財源をどうするんだ、という問題がある。また、全国民に配分するということは、金持ちにも同様に配るわけなので、貧困者を狙い撃ちにしたほうがもっと効果的なんじゃない? 説もある。他にも、毎月10万も(仮に)もらえたとしたら、人々は働かなくな

    BIを導入したら本当に人は働かなくなるのか?──『みんなにお金を配ったら──ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?』 - 基本読書
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    filinion 2019/10/15
    少なくとも最近流行りのMMTよりはよほど実証的研究が行われている政策なので、日本政府も試験的導入をしてみて欲しい。景気対策としても有効だと思う。
  • 科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書

    事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学 作者: ターリシャーロット,上原直子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/08/11メディア: 単行この商品を含むブログを見る事実では人の行動は変わらないという。議論をしたときに「これこれこういう事実がある」という主張をしても相手の意見が変えられなかった、ということは多かれ少なかれみな体験しているものではないだろうか。たとえば、アメリカではワクチンを摂取することで知的障害などが発生するリスクがあるというデマが拡散して、そのせいで百日咳やおたふく風邪が今更蔓延するというアホくさい状況が発生している。 ワクチンによって知的障害リスクが上がるのは完全にデマなので、科学的な事実の啓蒙を行えばいいでしょ、と思うかもしれないが、実はこれには全然効果がないのである。ある実験では反ワクチン思想を持つ親を集め、麻疹にかかった子どもの痛まし

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    filinion 2019/10/13
    「囲碁は人類には複雑すぎた」「株取引は人類には難しすぎた」「自動車の運転は人類には危険すぎた」…いずれ「議会政治は人類には早すぎた」となるのかも。チャーチルの「民主主義は最悪の政治体制」を思い出す。
  • 異世界からの”帰還後に”苦悩を抱き続ける少女たち──『不思議の国の少女たち』 - 基本読書

    不思議の国の少女たち (創元推理文庫) 作者: ショーニン・マグワイア,原島文世出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『不思議の国の少女たち』とは不思議な題名だが、読み始めてすぐに納得がいった。これは「不思議の国」や「ナルニア国」といったファンタジックな世界から”帰還した後”の少年少女たちが集まる全寮制の学校での物語なのだ。子供たちは異世界で大冒険を成し遂げた後、さまざまな理由によって元の世界へと帰還する。そして、その時の経験を大人たちに語るが、まずもってその内容が正しく理解されることはない。 大人からすればそれは子供にありがちな幻想的な誇大妄想、あるいは何らかの理由によって家出した時の、精神的トラウマによるショック症状にしか捉えられないからだ。そうした子供たちを救うために、学校は存在する。『入学するかもしれない子どもたちにと

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    filinion 2018/11/18
    古来、「行きて帰りし物語」では、若者が異世界に行って試練に遭い、それに打ち勝ち、人間的成長を遂げて元の世界に戻ってくる…のだが。今は戻ってこない話も多い…そしてこれは「成長」が認められない話か…。
  • 人類のほぼ全てが視力を失った終末世界──『トリフィド時代―食人植物の恐怖』 - 基本読書

    トリフィド時代 (人植物の恐怖)【新訳版】 (創元SF文庫) 作者: ジョン・ウィンダム,中村融出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/07/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る英国SF界にその名を轟かすジョン・ウィンダムの代表作『トリフィド時代』の新訳版が出た。僕も三足の動く植物がまあなんかスゲーんだよ!! という雑な評判は知っていたのだが読むのは今回がはじめて。第二次世界大戦の爪痕が色濃く残る1951年に刊行された作品だけれども、今読んでもめちゃくちゃおもしろい。 基的には終末世界をわずかに生き残った人間がロードームービー的に旅をしていくのだが、その世界には人間をべる凶悪な植物〈トリフィド〉がいて──と、今でいうと終末ゾンビ物のゾンビがトリフィドに入れ替わったような感じか(内容はずいぶん違うが)。ゾンビだと「死」の象徴としての側面が強いし、手垢が

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    filinion 2018/08/03
    本作後半、様々な主義主張や社会制度を持つグループが対立したり協調したりする展開、Civ4のMODでできそうだな、と思っている。作中では、人道主義者が有利な立地を手に入れて勝利するが、違った展開もあり得る…。
  • 早川書房の電子書籍版「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する - 基本読書

    早川書房が突然電子書籍版の海外SFセールをはじめたので、SFマガジンで海外SFブックガイドの連載を担当していてかつブログも書いている身なので、これはまあ、さすがになんかオススメとか書いておいたほうがいいかという気持ちになってきたので今この記事を書いている。いろいろな角度からオススメしたいばかりなので全部取り上げられるわけではないが、まあ軽い目安としてご活用ください。 まずはこれを読むと良いのでは?? ハヤカワ文庫SF総解説2000 (早川書房) 出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/07/08メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るハヤカワ文庫SF総解説2000。2015年に出た『ソラリス』文庫版によって2000番に到達したハヤカワ文庫SFを記念して、2000冊分のSFを総解説した一冊。ほとんどの作品は340文字で的確に、シリーズ物などは1ページまるっと使って解説し

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    filinion 2017/11/11
    ディックもイーガンも、ここにある「電気羊」「しあわせの理由」あたりは普通にオススメできると思う。…他の作品は、その作家を好きになったら読めばいい。/「われはロボット」とかアシモフの短編もいいですよ。
  • ルールが保証されないゲームに、いかにして挑むのか──『ゲームの王国』 - 基本読書

    ゲームの王国 上 作者: 小川哲出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/08/24メディア: 単行この商品を含むブログを見るゲームの王国 下 作者: 小川哲,mieze出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/08/24メディア: 単行この商品を含むブログを見る第三回ハヤカワSFコンテストを『ユートロニカのこちら側』で受賞した小川哲、彼の二年ぶりの新刊が『ゲームの王国』だ。あらゆる個人情報を提供する代わりに生活全般が保証される、特別提携地区を舞台にゴリゴリの未来社会を描いてみせたユートロニカとはうってかわって、書の始まりの舞台は1956年のカンボジア。最初の視点人物は後にポル・ポトと呼ばれ、革命を成し遂げることになるサロト・サルだ。 "権力者が都合良くルールを設定し、好きなように覆す"腐った政治体制の中で、いかにして人々は自身の正しさを貫き、ルールに挑むのか。そんなカン

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    filinion 2017/09/02
    「ユートロニカ」は読んだ。なかなか考えさせられる話だった。しかしこれはまた重そうだなあ…。