建設業界や物流業界で進んでいる「働き方改革」。それが、長時間労働が当たり前だった医療業界にも広がっている。大学病院などに勤務する医師らが対象で、これまで無制限だった時間外労働に、年間960時間の上限が設けられる。ただ、医療現場は生死の瀬戸際にある患者も運ばれてくる、いわば「命の砦」。救える命は何としても救わなければならない。医師たちはいかにして、この逆風に立ち向かうのか、その最前線に迫る。 埼玉県にある川越救急クリニック。午後4時から10時まで診察を行う民間のクリニックで、救急車は24時間受け付けている。今、全国的にみても特に救急救命の現場では医師が不足。とりわけ埼玉県はかねてから救急医療体制の脆弱性が指摘されていた。そこで2010年、全国的にも珍しい個人経営の救急クリニックを開業したのが、院長である上原淳医師だ。取材をしている最中、特に深夜になると、他の病院で受け入れできなかった救急車が