James Robertson, And the Land Lay Still (2010; Penguin, 2011) Naomi Ishiguro, Escape Routes (Tinder Press, 2020) 著者: 柴田元幸 自分の翻訳の話で恐縮ですが、去年12月に東京創元社から出した、カナダ人作家エリック・マコーマックの『雲』が少部数ながら増刷になった。一部にファンがいることは知っていたが、本文453ページ、3500円(+税)の本ということで増刷は始めからあきらめていたのでとても嬉しい。そしてそれ以上に、本のすぐれた読み手である人たちが読んでくれて、面白かった、よかった、とメールや手紙をくれたり書評を書いてくれたりしたのは本当に嬉しかった。何しろマコーマックが好きなので、僕はこの作家を偏愛しすぎではないか、という疚(やま)しさのようなものがずっとあったのだが、いややっぱ